■ゼータ関数と素数(その9)
【3】ラマヌジャン数(保型形式論の端緒)
保型形式が最初に現れたのは,1750年のオイラーによる五角数定理
Π(1-q^n)=Σ(-1)^mq^(m(3m-1)/2)) m(3m-1)/2は五角数
ですが,ヤコビの公式(もうひとつの三角数定理?:1829年)
Π(1-q^n)^3=Σ(-1)^m(2m+1)q^((m^2+m)/2) (m^2+m)/2は三角数
を経て,ラマヌジャンの保型形式論の時代に突入します.
ラマヌジャンは,
Δ(z)=qΠ(1-q^n)^24=Στ(n)q^n
zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)
を考え,その係数τ(n)を計算しました.
τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,・・・
ここでも,無限積をベキ級数に展開した式(フーリエ展開)が登場しましたが,このΔ(z)は,重さ12の保型形式
Δ(az+b/cz+d)=(cz+d)^12Δ(z)
と呼ばれるものになっていて,オイラーの五角数公式の拡張(24乗版)と考えられます.
τ(n)はオイラーの分割数のアナローグであり,ラマヌジャン数と呼ばれます.この数は驚くような性質をもっています.
また,ラマヌジャンは保型形式を用いて,たとえば,
Σn^5/{exp(2πn)-1}=1/504
Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
Σn^3/{exp(2πn)-1}=1/80(ω/π)^4-1/240
Σ1/n{exp(2πn)-1}=-π/12-1/2log(ω/√2π)
を証明しています.ここで,πとωはそれぞれ,
π=2∫(0,1)1/√(1-x^2)dx=3.14159・・・(円周率)
ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=2.62205・・・(レムニスケート周率)
です.
これらの等式は,積分表示
ζ(s)=1/Γ(s)∫(0,∞)x^(s-1)/{exp(x)-1}dx
の離散化とみることができますが,この式はコラム「プランク分布と量子化の概念」で紹介したプランク分布(Bose-Einstein統計)そのものです.
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