■テータ関数と格子(その12)
【5】可解性条件
これまで(m,n)=(5,−5)には自然数解があることが得られましたが,
a)(m,n)=(1,−1)には自然数解は存在しないことの証明がフィボナッチ・フェルマーの定理であること
(y>0,x,z,wはすべて≧0としてよい.x^2+y^2=z^2よりz>0.またここでx>0.もしx=0ならばx^2−y^2=−y^2=w^2<0となり矛盾.またw>0.もしw=0ならばx^2−y^2=w^2=0より,x=y.これをx^2+y^2=z^2に代入すると2x^2=z^2となり矛盾.したがって,非自明解があるとすると自然数解ができてしまい,フィボナッチ・フェルマーの定理に矛盾する.)
b)自明な解を除いて(m,n)=(1,2)には自然数解がない,一方,(2,6)には自然数解,たとえば,(x,y)=(1,2),(191,60)などがあることが帰結として導かれます.
1^2+2・2^2=3^2,1^2+6・2^2=5^2
191^2+2・60^2=209^2,191^2+6・60^2=241^2
拡張したフィボナッチ・フェルマーの方程式
x^2+my^2=z^2
x^2+ny^2=w^2
の自然数解の有無については部分的な解答が得られているだけで,完全な解決(一般的な可解性条件)はまだ得られていませんが,わかっていること,予想されていることについてまとめておきましょう.
a)(m,n)=(1,2n^2−1) (n≧2)には非自明解がある
b)(m,n)=(m,2−m) (m≠0,1,2)には非自明解がある
c)(m,n)=(k,−k) (kは分離的数)の場合,
k=1,k=2→自明解のみ
k=3(mod8)→自明解のみ
k=5,6,7(mod8)7→非自明解がある
k=1,2(mod8)→どちらの場合もある
kが分離的とはp^2|kなる素数pがないこと,すなわち,k=±p1p2・・・pn,pi≠pjと因数分解されることである(k=±1は分離的,k=1は平方数であり分離的数である唯一の整数).
k=5,6,7(mod8)7→非自明解がある
という予想は,BSD予想からも自然にでてくるものであるという.
d)(m,n)=(k,−k)に非自明解がある場合,
kc^2=ab(a^2−b^2) (a,b)=1,a≠b(mod2)
を満足するa,b,cに対して,
x=(a^2+b^2,2c,a^2−b^2+2ab,a^2−b^2−2ab)
は非自明解を与える.
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[参]小野孝「オイラーの主題による変奏曲」実教出版
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[補]正の整数Aが3辺が有理数の直角三角形の面積になっているとき,すなわち,A=ab/2,a^2+b^2=h^2のとき,合同数と呼ばれる.6は直角三角形(3,4,5)の面積,30は直角三角形(5,12,13)の面積であるから合同数である.最小の合同数は直角三角形(3/2,30,3,41/6)の面積5である.1は合同数ではない.
(平方因子をもたない)正の整数Aが合同数であるための必要十分条件は
x^2+Ay^2=z^2
x^2−Ay^2=w^2
が整数解でy≠0のものをもつことである.
合同数問題における整数Aの性質と楕円曲線:y^2=x^3−A^2xとの関連については
J.S.Chahal「数論入門講義」共立出版
を参照されたい.
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