■テータ関数と格子(その10)

【3】フィボナッチの問題の拡張

 

 ここでフィボナッチ・フェルマーの方程式を拡張してみることにしましょう.

  x^2+my^2=z^2

  x^2+ny^2=w^2

の自然数解の有無を問うものですが,いってみれば連立の類体論のごとき問題です.

 

 その証明の筋道は

a)2つの2次曲面

  x^2+my^2=z^2

  x^2+ny^2=w^2

の交わりである射影空間P^3における曲線は,

  φ(x,y,z)=(y(z^2−mx^2)=x(z^2−ny^2),2xyz,y(z^2+mx^2),x(z^2−ny^2))

  ψ(x0,x1,x2,x3)=(1/m(x2−x0),1/n(x3−x0),x1)

とおいてみると,射影平面P^2における楕円曲線

  mx^2y−nyx2−(x−y)z^2=0

  y(z^2−mx^2)=x(z^2−ny^2)

と双正則同型になること(整数点は整数点に移る)

 

b)mx^2y−nyx2−(x−y)z^2=0において,x−y=1とおくと

  z^2=(n−m)x(x−1)(x−n/(n−m))

z=(n−m)^(1/2)yと変数変換すると

  y^2=x(x−1)(x−λ)   λ=n/(n−m)

さらに,λを(λ−1)/λに置き換えると,λ=m/n

  m=(λ1−λ3)/(λ0−λ3)

  n=(λ1−λ2)/(λ0−λ2)

 

 すなわち,この曲線は射影的に

  y^2=x(x−1)(x−λ),λ=n/(n−m)

と同値であること,したがって,j不変量は

  j=2^8(n^2−mn+m^2)^3/m^2n^2(n−m)^2

で表されること

 

c)楕円曲線には,楕円曲線と三点で交わる直線で,そのうちの二つの交点の座標がわかれば他の一点の座標も計算でき,二つの点の座標が有理数ならば,他の一点の座標も有理数であるなどの性質をもっている(群構造)ことから,P=(x),Q=(y),P+Q=(z)=(z0,z1,z2)とすると(かなりの努力の後),

  z0=(x1y0−x0y1)(x0y0−2nx2y2)+(x0y2−x2y0)(x0y0−2mx1y1)+m(x1^2y0y2−x0x2y1^2)+n(x0x1y2^2−x2^2y0y1)

  z1=(x1^2y0^2−x0^2y1^2)+(x0^2y1y2−x1x2y0^2)+(2x0y0−mx1y1)(x2y1−x1y2)+n(x2^2y1^2−x1^2y2^2)

  z2=(x1x2y0^2−x0^2y1y2)+(x0^2y2^2−x1^2y0^2)+2x0y0(x2y1−x1y2)+m(x2^2y1^2−x1^2y2^2)

 

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 たとえば,m=5,n=−5とすると

  F=mx^2y−nyx2−(x−y)z^2

   =5x1^2x2+5x1x2^2+x1x0^2−x2x0^2=0

この上の点P=(x)=(x0,x1,x2)=(30,4,5)とすると,

  2P=(62279,11532,28812)

 

 次に

  φ(x,y,z)=(y(z^2−mx^2)=x(z^2−ny^2),2xyz,y(z^2+mx^2),x(z^2−ny^2))

を用いて,整数点φ(P),φ(2P)を計算すると,

  φ(P)=(41,12,49,31)

   →41^2+5・12^2=49^2

    41^2−5・12^2=31^2

  φ(2P)=(3344161,1494696,4728001,−113279)

   →3344161^2+5・1494696^2=4728001^2

    3344161^2−5・1494696^2=(−113279)^2

 

 この節の最後に,オイラーによる楕円曲線:y^2=ax^3+bx^2+cx+dの解法を紹介しましょう.

 

 d=f^2とする.gを未知数として,ax^3+bx^2+cx+f^2=(gx+f)^2なる関係を考える.c=2fgになるようにgを定めれば,ax+b=g^2.したがって,

  x=(g^2−b)/a=(c^2−4bf^2)/4af^2

なる有理数解を得る.

 

 手品のようですが,幾何学的に考えると

  F(x,y)=y^2−ax^3−bx^2−cx−f^2

の点(0,f)における接線の方程式は−cx+2f(y−f)=0.ここで,c=2fgと定めるとy=gx+fになる.曲線は3次で,接点では2重に交わるから,第3の交点(有理点)が1つ決まるのです.

 

  y^2=ax^4+bx^3+cx^2+dx+e

では,e=f^2,d=2gf,c=g^2+2hfとおくと,ax^4+bx^3+cx^2+dx+f^2=(hx^2+gx+f)^2より,ax+b=h^2+2hg.したがって,

  x=(b−2hg)/(h^2−a)

なる解が得られます.

 

  y^3=ax^3+bx^2+cx+d

の場合も同様に解くことができますが,これらの方法は実質的にはディオファントスまでさかのぼることができます.

 

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