■テータ関数と格子(その8)

ヤコビの楕円関数θ1,θ2,θ3,θ4において,しばしば

  θ4=θ0

と書かれます.そのわけは,射影空間の点x=(x0,x1,x2,x3)の座標の添字0,1,2,3に対応させるためです.

 

 射影空間では,直線上の4点の複比

  {(x0−x2)/(x1−x2)}/{(x0−x3)/(x1−x3)}

は不変です.今回のコラムでは,拡張したフィボナッチの問題をテータ関数を用いて証明してみることにします.一見行使とは無関係に見えるかもしれませんが格子と深くかかわっています。

 

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【1】フィボナッチの問題

 

 ピタゴラス方程式:x^2+y^2=z^2には無数の自然数解があるのですが,それでは連立2次のディオファントス方程式:

  x^2+y^2=z^2

  x^2−y^2=w^2

の自明でない自然数解を考えてみましょう(フィボナッチの問題).

 ただし,(1,0,±1,±1)などの自明な解は必ずあるわけですから,どのx,y,z,wも0でないものとします.

 

 実は,そのような答えをもたないことがフェルマーによって証明されていて,それがフィボナッチ・フェルマーの定理と呼ばれます.フィボナッチは西暦1200年頃,解は存在しないことを予想していたのですが,400年後にフェルマー得意の無限降下法によって証明が与えられました.すなわち(x,y,z,w)の最大公約数が1である任意の原始解を定めるとx’<xなる第2の原始解,x”<x’なる第3の原始解,・・・ができて矛盾を生じてしまうのです(要するに数学的帰納法).

 

 さらに,この定理を応用すると,

「3辺の長さが自然数であるような直角三角形と同じ面積をもつ,辺の長さが自然数の正方形は存在しない(x^2+y^2=z^2,xy=2t^2)」

「x^4−y^4=z^2の自然数解はない」

「x^4+y^4=z^4の自然数解はない(n=4の場合のフェルマー予想)」

などが証明できます.

 

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