■チェビシェフ多項式と正多面体(その15)
ペル方程式:x^2−dy^2=1について,フェルマーは少なくとも1つの自明でない整数解((x,y)=(±1,0)以外の解が存在するだろうと予想しましたが,この予想は1768年,ラグランジュにより証明されています.
この方程式は無限に多くの解をもち,基本解(最小の整数解)を(x,y)とおくと一般解は
±(x+y√d)^n n=0,±1,±2,・・・
により与えられます.ペル方程式は√dの最良近似値を次々に生成する所以です.
基本解の求め方についてはすでに説明したとおりです.今回のコラムではまずd=2の場合を扱ってみましょう.
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【1】√2の近似値とペル数列
√2は2つの整数の比p/qではないので,√2=p/qすなわちp^2=2q^2になるような2つの整数p,qを見つけることはできません.しかし,誤差±1を許すことにすると
2q^2=p^2±1 (ペル方程式)
なる2つの整数p,qを見つけることができます.
ところで,an=2an-1+an-2という漸化式で生成される数列
1,2,5,12,29,70,169,408,・・・
はペル数列と呼ばれます.これにはおもしろい性質があって,
1^2+1^2=1^2+1
2^2+2^2=3^2−1
5^2+5^2=7^2+1
12^2+12^2=17^2−1
・・・・・・・・・・・・・
このとき,±1は交互に繰り返し現れます.
√2の最良近似値は1/1,3/2,7/5,17/12,41/29,・・・です.このような分数を全部求めるには1/1から出発して1+1=2が次の分母になり,1+2=3が次の分子になる,3+2=5が第3の分母,2+5=7が第3の分子になる,すなわち,1つ前の分数の分子と分母の和が次の分母になり,ひとつ前の分数の分母を2倍したものとその分子の和が次の分子になり,同様に続いていくという算術的な規則があります.
1/1↓ ↑3/2↓ ↑7/5↓ ↑17/12↓ ↑41/29↓ ・・・
すなわち,ペル方程式:p^2−2q^2=±1を満たすp/qがひとつの分数で,P/Qが次の分数だとすると
Q=p+q,P=q+Q=p+2q
P^2−2Q^2=2q^2−p^2=±1
となって,P/QもまたP^2−2Q^2=±1となる分数を与えることができることになります.1/1から始まって次々に解となる分数を見つけることができるというわけです.
p/q→P/Q=(p+2q)/(p+q)
(−1) 1/1<7/5<41/29<239/169<・・・<√2<・・・<577/408<99/70<17/12<3/2 (+1)
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Q(√2)ではε=1+√2が基本単数ですが,その他の解は
(1+√2)^n=an+bn√2
により与えられます.
(1+√2)(1−√2)=−1
(1+√2)^2(1−√2)^2=1
(1+√2)^3(1−√2)^3=−1
(1+√2)^4(1−√2)^4=1
より,x^2−2y^2=±1の解を(tn,un),
x^2−2y^2=1の解を(xn,yn),
x^2−2y^2=−1の解を(rn,sn)
とおくと
tn+√2un=(1+√2)^n
xn+√2yn=(1+√2)^2n(3+2√2)^n
rn+√2sn=(1+√2)^2n-1=(1+√2)(3+2√2)^n-1
で与えられます.
tn+1+√2un+1=(1+√2)(tn+√2un)
=(tn+2un)+√2(tn+un)
より
tn+1=tn+2un
un+1=tn+un
cn =[tn,un]’ A=[a,b]=[1,2]
[c,d] [1,1]
とおくと,cn+1=Acn,cn+2=Acn+1=A^2cn
ここで,ケーリー・ハミルトン方程式
A^2=(trA)A−(detA)I
より
cn+2 =A^2cn=(trA)Acn−(detA)Icn
=(trA)cn+1−(detA)cn
=(a+d)cn+1−(ad−bc)cn
=2cn+1+cn
ところで,ペル数列(an=2an-1+an-2)
1,2,5,12,29,70,169,408,・・・
の特性方程式
x^2−2x−1=0
の2根を
γ=1+√2,δ=1−√2
とおくと,ペル数列の一般項は,
Pn =1/2√2(γ^n−δ^n)
また,連続する2項の比は
1+√2
に次第に近づくことになります.
tn =1/2(γ^n+δ^n)
un =1/2√2(γ^n−δ^n)
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xn+1+√2yn+1=(3+2√2)(xn+√2yn)
=(3xn+4yn)+√2(2xn+3yn)
cn+2 =6cn+1−cn
α=3+2√2,β=3−2√2
xn =1/2(α^n+β^n)
yn =1/2√2(α^n−β^n)
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