■古代のサイコロ

【1】古代朝鮮のサイコロ(old Korean dice)

 朝鮮サイコロは正方形6枚と六角形(正六角形ではない)8枚の2種類の面をもつ14面サイコロです.普通の立方体のサイコロの8つの角を三角に切り落とした形(切頂立方体)です.朝鮮サイコロは最も風変わりなサイコロという言い方が可能です.正多面体ではなく、かつ、内接球と外接球を有する多面体という特異な特徴を有しているからです。

韓国の歴史ドラマで朝鮮サイコロが使われたらしく,ときどき話題になるそうです.ウィキペディア韓国版では『ジュリョング (酒令具)は、1975年のレース雁鴨池で出土した正方形6面,六角形の面8つからなる14面体のサイコロである。 正方形面の面積は6.25平方センチメートル、六角形面の面積は6.265平 方センチメートルで確率がほぼ1/14で均等になっている。 材質はオークである。 各面には、さまざまな罰則が書かれており、新羅人の飲酒の習慣の風流を示している。 出土した本物は遺物保存処理の間に燃えてしまい、クローンだけが残っている。』

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【2】古代中国のサイコロ(old Chinese dice)

 古代中国で使われたこのサイコロは「六博サイコロ」と呼ばれています.おそらく「双六」という呼び名のルーツだと思われます.朝鮮サイコロが切頂立方体であるのに対して,中国サイコロは切稜して作ります.

 六博の18面体サイコロは木製だそうです.また,朝鮮の双六さいころも木製に見えます.二千数百年の時を隔てているとはいえ,内接球をもつ切稜立方体と内接球をもつ切頂立方体という,いわばirregularな木製のさいころが東アジアで作られていたというのはたいへん興味深いことです.

 一松信先生に教えていただいたのですが,立方八面体,菱形十二面体,端欠八面体などは,漢字文化圏(中国,韓国,日本,ベトナム?)では魔除けの形として昔から作られているようです.サイコロに使われた例はよく知りませんが,いろいろ考証したものもあり,どの国ではどの形が好まれるのかといった比較もされているとのことでした.

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【3】古代ローマのサイコロ

古代エジプトの12面体サイコロが大英博物館に展示されているそうですが、クリスティーズのオークション(2003年)で古代ローマの20面体サイコロが180万円で競売にかけられたという話もあります。2500年前にはすでにこれらのサイコロが玩具として使われていたことがわかっています。

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[補]放散虫と呼ばれる海洋微生物のケイ素骨格には正20面体や正12面体がみられる.ウィルスでも正20面体になるものがある.生物以外でも正20面体や正12面体の形を帯びた無機物が存在する.たとえば,ホウ素は正20面体の頂点に位置する12個の原子からなる分子B12を形成する.1984年には正12面体の形状をもつ準結晶が発見された.

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