■モーリーの奇跡(その7)

 ユークリッドは3つの角を2等分することで内心を見つけたのですが,モーリーは3つの角を3等分するとどうなるかを問題にして,モーリーの定理「任意の三角形において,各内角の3等分線の隣同士の交点を結んで得られる三角形は正三角形である」を発見しました(1899年).

 モーリーの定理のような基本的事実が2000年という長い間見過ごされ,20世紀直前にいたるまで発見されなかった理由は,角の三等分の評判があまりにも悪名高く,まともに取り上げようとする数学者が皆無だったせいなのでしょう.しかし,角の三等分は作図できないにしても,三等分線そのものは確かに存在し別の方法を使えば作図できるのです.

 その後,次々とモーリーの定理の証明が発表され,ロジャー・ペンローズやジョン・コンウェイのものを含めその数は150にもおよび,いまでも増え続けているそうです.三角形の幾何学は永遠に不滅なのです.

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 ところで,

 [Q]モーレーの三角形の中心(重心)はもとの三角形の何と一致するのだろうか?

 もとの三角形の内心(角の二等分線の交点)とは一致しないことは確かめられるが,それでは何かという難問である.

  [参]一松信「現代に活かす初等幾何学入門」岩波書店

によると三角形に関する権威ある書籍には,三角形の諸心は91点あり,それらは103本の直線に載っていると記されているという.実はもっと多く,400点の諸心が挙げられている報告もあるらしい.

 三角形の5心とは内心,傍心,重心,外心,垂心を指すが,古代ギリシャ人は5心について知っていた.ユークリッドは三角形の中心と呼べる点を4つ(内心,重心,外心,垂心)知っていたらしい.これ以外にも中心はいろいろあり,その1500年後,フェルマー点が発見され,さらに1〜2世紀後に9点円の中心,その次がジュルゴンヌ点,19世紀にはいるとナーゲル点やブロカール点などが発見された.他にも,ナポレオン点,ド・ロンシャン点等々.

 しかし,モーリーの正三角形の中心点は「モーリーの正三角形の中心点」というしか意味がない,つまり,既知の諸心とは関係なく(残念な結果であるが)「モーリーの正三角形の中心点」といわざるを得ないようである.

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