■ヨハン・アルブレヒト・オイラーの不等式(その25)

[4]アルゴリズムの破綻

 (その10)の[1][2][3]はそれぞれ2元,3元,4元の2次形式の問題なので,n次元空間における格子点の配置の問題として幾何学的に考えることができます.すなわち,ラグランジュの定理は4次元空間内の原点を中心とする半径√nの球面には必ず格子点があることを主張しているわけです.半径√nの2次元の円,3次元の球には格子点が存在するとは限らないのです.

 (その10)の数値実験では,実際に4個必要なのは7だけで,他はすべて3個以下の平方数の和で書けていました.どの場合に2つで済むのか,3つで済むのか?という問題は,ラグランジュの定理に先行するフェルマー・オイラーの定理,ガウス・ルジャンドルの定理で解決されています.

 また,nを越えない最大の平方数は,ガウス記号を用いて[√n]^2と表せるのですが,nを越えない最大の平方数をとり,その残りに対して同様に最大の平方数をとる,・・・,そして残りが平方数になるとおしまいというアルゴリズムによって,4個の平方数の和

  n=n1^2+n2^2+n3^2+n4^2

に分解できるように思われます.はたして,これは正しいのでしょうか? 数値実験を続けてみることにします.

  11=3^2+1^2+1^2

  12=3^2+1^2+1^2+1^2

  13=3^2+2^2

  14=3^2+2^2+1^2

  15=3^2+2^2+1^2+1^2

  16=4^2

  17=4^2+1^2

  18=4^2+1^2+1^2

  19=4^2+1^2+1^2+1^2

  20=4^2+2^2

  21=4^2+2^2+1^2

  22=4^2+2^2+1^2+1^2

  23=4^2+2^2+1^2+1^2+1^2

 素数23では5個の平方和となり,このアルゴリズムは23で破綻してしまいます.もちろん,23は8n+7型の素数ですから,3個の平方和では表すことはできませんが,

  23=3^2+3^2+2^2+1^2

のように4個の平方和の形に表すことができます.

 また,

  12=3^2+1^2+1^2+1^2=2^2+2^2+2^2

  18=4^2+1^2+1^2=3^2+3^2

  19=4^2+1^2+1^2+1^2=3^2+3^2+1^2

  23=4^2+2^2+1^2+1^2+1^2=3^2+3^2+2^2+1^2

のように,より少ない数の平方和として幾通りかに表すことのできる数もあります.

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