■算術平均・幾何平均不等式(その18)

 単位円に内接する正n角形の辺と対角線について

  本数(Σc),長さの総和(Σa×c),長さの2乗の総和(Σb×c)

とすると

  本数(Σc)=n(n−1)/2=N

  長さの2乗の総和(Σb×c)=n^2

  長さの総和に関する不等式として,

  (Σb×c)<(Σa×c)^2<N・(Σb×c)<n^4/2

が成り立つ.今回のコラムでは,これについては触れることにする.

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[1]長さの総和の2乗と長さの2乗の総和の間に成り立つ関係は?

 (Σa×c)^2の上界は高校生には難しいかもしれないが,

  u=(1,1,・・・,1),v=(d1,d2,・・・,dN)

に対して,コーシー・シュワルツの不等式(u・v≦|u||v|)を適用すれば,

  (Σa×c)^2≦N・(Σb×c)<n^4/2

  (等号は正三角形のとき)

 コーシー・シュワルツの不等式によらない場合は,

  2(a^2+b^2)−(a+b)^2=(a−b)^2≧0

  3(a^2+b^2+c^2)−(a+b+c)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2≧0

  4(a^2+b^2+c^2+d^2)−(a+b+c+d)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−d)^2+(d−a)^2≧0

より,

  NΣdi^2−(Σdi)^2≧0   (等号はd1=d2=・・・=dNのとき)

を導き出すことができる.

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[2]コーシー・シュワルツの不等式

  (Σab)^2≦(Σa^2)・(Σb^2)

  等号が成り立つのはa1/b1=a2/b2=・・・=an/bnのときに限る

というのが,コーシー・シュワルツの不等式である.n=1のときは相加相乗平均不等式に帰着する.

 n=3のときは

  (ax+by+cz)^2≦(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)

となる.とくに,a=b=c=1とすると

  (x+y+z)/3≦(x^2+y^2+z^2)

となって,[1]に掲げた

  2(a^2+b^2)−(a+b)^2=(a−b)^2≧0

  3(a^2+b^2+c^2)−(a+b+c)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2≧0

  4(a^2+b^2+c^2+d^2)−(a+b+c+d)^2=(a−b)^2+(b−c)^2+(c−d)^2+(d−a)^2≧0

  NΣdi^2−(Σdi)^2≧0   (等号はd1=d2=・・・=dNのとき)

も,コーシー・シュワルツの不等式によっていることが理解される.

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[3]チェビシェフの不等式

  a1≦a2≦・・・≦an,b1≦b2≦・・・≦bnのとき,対応する要素の積の平均は平均の積よりも大きい,すなわち,

  (Σab)/n≦(Σa)/n・(Σb)/n

  n(Σab)≦(Σa)・(Σb)

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[4]相加相乗平均不等式

 チェビシェフの不等式においてb=1/aと置く代わりに,ここでは相加相乗平均不等式を用いて

  (Σa)・(Σ1/a)≧n^2

を証明する.

 n=2のとき,

  (a+b)(1/a+1/b)=1+a/b+b/a+1

 a/b+b/a≧2より

  (a+b)(1/a+1/b)≧4

 (Σa)・(Σ1/a)≧n^2

ではn^2個の項が得られるが,n個の1と(n^2−n)/2個の項の対(各対は2以上)の分解されるから,全体の和は

  ≧n+(n^2−n)=n^2

になる.

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