■算術平均・幾何平均不等式(その15)
【2】中・高校生のための因数分解
x^2−5x+6は因数分解できるが,x^2+1は複素数を使わない限り因数分解できない.したがって,因数分解を見つけるには典型例を記憶しておくという原始的な方法が最も近道のようである.代表的なところでは
a^2−b^2=(a+b)(a−b)
a^2+2ab+b^2=(a+b)^2,a^2−2ab+b^2=(a−b)^2
x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)
a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca)=(a+b+c)^2
a^3+b^3=(a+b)(a^2−ab+b^2),a^3−b^3=(a−b)(a^2+ab+b^2)
a^3+b^3+c^3−3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)=1/2(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}
また,高校数学のカリキュラムからは消えているのだが,
a^4+a^2b^2+b^4=a^4+2a^2b^2+b^4−a^2b^2
=(a^2+b^2)^2−a^2b^2=(a^2+ab+b^2)(a^2−ab+b^2)
この因数分解のミソは適当に余分な項を加減していることである.
ところで,
一松信「数学とコンピュータ」共立出版
を読んで知ったことであるが,是非ここで紹介(受け売り)しておきたい.
中学校の課題研究の際,Mathematicaに「x^4+1を因数分解せよ」と入力しても「因数分解できません」と返ってきた.x^4+2,x^4+3も同様である.ところが,x^4+4に対しては
x^4+4=(x^2+2x+2)(x^2−2x+2)
という結果が返ってきて驚かされた.さらに,x^4+5,x^4+9,x^4+16,x^4+25,・・・と試みても「因数分解できません」という結果であったが,根気強く続けて,x^4+64では
x^4+64=(x^2+4x+8)(x^2−4x+8)
とうまくいった.
よくよく理由を考えてみると,一般式
(x^2+c)^2−(bx)^2=x^4+(2c−b^2)x^2+c^2
=(x^2+bx+c)(x^2−bx+c)
において,2c=b^2の特別な場合になっていること.また,この変形はあまりに技巧的で高校数学のカリキュラムからも消えているのだが,それを数式処理システムを使って発見的に得ることができたことなど,数式処理システムの効用についてのエピソードであるが,数式処理システムが数学研究のみならず,数学教育にも有効と考えられる所以である.
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