■多元数(その8)
[2]ケイリー整数とE8格子
八元数Σajejにおいて,係数aj(j=0~7)が
1)整数値をとるもの
をグレーブス整数と呼びます.さらに
2)半整数値の奇数倍をとるもの
3)4個が整数値,4個が半整数値の奇数倍をとるもの
を加えて,「ケイリーの(八元)整数」と呼びます.
半整数値をとる座標は0個か4個か8個です.ただし,3)において整数である番号は(i,j,k)7組に0(実数)を加えた集合および(0〜7)に対するその補集合の14組に限ります.
このような点をすべてとると,8次元空間内で隣り合う2点間の距離がすべて1の格子ができあがります.原点に隣接する点は240個あり,それらと原点を結ぶベクトルが例外型リー環のE8ルート系を表すので,この格子をE8格子といいます.
E8格子にはほかにもいくつかの構成法があり,ここではケイリー整数との関連で説明しましたが,その配列は本質的にはこの形しかありません.S^7の上の240個の点は直交変換で互いに移りうる点の組を同じものとみなすと一意なのです.
そして,8次元空間において,2個の正軸体(正8面体の拡張)と1個の正単体(正4面体の拡張)を組み合わせると空間充填形ができるのですが,ケイリー整数の作る格子がその具体形になっていて,E8はA8とD8両方を含んでいるというわけです.
なお,E8格子において,原点からの距離が√nである格子点の個数は
240σ3(n)
(ここで,σ3(n)はnの約数の3乗の和)と表せることが知られています.すなわち,
n=1(1^1,0^7)(1/2^4,0^4) → 240・1^3=240個
n=2(1^2,0^6)(1/2^4,1^1,0^3)(1/2^8) → 240・(1^3+2^3)=2160個
n=3 → 240・(1^3+3^3)=6720個
n=4 → 240・(1^3+2^3+4^3)=17520個
n=5 → 240・(1^3+5^3)=30240個
こうして,ケイリー単数は240個あることがわかります.
±(0),±(1),±(2),±(3),±(4),±(5),±(6),±(7) 16個
と(i,j,k)7組に0(実数)を加えた集合および(0〜7)に対するその補集合の14組のあらゆる符号の組合せ
1/2(±0±i±j±k) 14・16個
ケイリーの整数の素因数分解では,フルヴィッツ整数のように単数転移だけでは一意的ではなく,結合法則の欠如も考慮しなければなりません.PU・U1^(-1)QがPQに等しいとは限らないのです.しかしながら,たとえば,P1((P2P3)P4)と(P1P2)(P3P4)の間の関係づけの正当化(メタ転移)を要求することによって一意的にできるのです.
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