■多元数(その7)

【補】有限射影平面

 1本の直線上にn個の点があるアフィン平面をn次のアフィン平面と呼びます.有限アフィン平面Fq×Fqは

  {(x,y)|ax+by=c,a,b,c,x,yはFqに属する}

で定義されるものです.n次のアフィン平面では1点を通る直線はn+1本で,n^2個の点がありますから,全部で

  n^2(n+1)/n=n(n+1)

本の直線があります.

 最も簡単な有限アフィン平面はZ2×Z2で,4個の点を四面体状に結んだものです.また,n次のアフィン平面上では平行な直線はn本あり,平行な直線同士を集めた組がn+1組あります.

 アフィン平面では平行な直線が存在しましたが,しかし,すべての直線が交点をもつとしても矛盾を生じない幾何学の体系を考えることができます.アフィン平面に無限遠点,無限遠直線を加えて完備化すると射影平面が得られますが,完備化により点の数がn+1個,直線が1本増えます.したがって,n次射影平面における点の数はn^2+n+1,直線の数もn(n+1)+1=n^2+n+1で等しくなります.

 これを

  q=n^2+n+1

とおきますが,たとえば,2次の射影平面は7つの点,7本の直線よりなり,このことが射影平面の双対性と結びついてきます.

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 最も簡単な射影平面は,有限体Z2上の2次元射影幾何であって,ファノ平面と呼ばれています.そして,7個の点p1〜p7を(1〜7)と略記することにして,例えば,7本の直線上の3点の組を(1,2,3),(1,4,5),(1,6,7),(2,4,6),(2,5,7),(3,4,7),(3,5,6)の7組の体系は射影幾何の公理系を満たすことになります.

 そして,q行q列の行列A={aij}を

  aij=1・・・直線liが点pjを通るとき

     0・・・そうでないとき

と定めると,成分が0か1の行列を得ることができます.

    [1,1,1,0,0,0,0]

    [1,0,0,1,1,0,0]

    [1,0,0,0,0,1,1]

  A=[0,1,0,1,0,1,0]

    [0,1,0,0,1,0,1]

    [0,0,1,1,0,0,1]

    [0,0,1,0,1,1,1]

 この結合組の例では対称行列になりましたが,一般的には対称行列とはなりません.また,この行列では,各点は3本の直線に含まれるので,各行には1が3回現れます.また,各直線は3個の点を通るので,各列にはやはり1が3回現れます.そして,すべての成分が1である行列をJとすると,行列Aは

          [3,1,1,1,1,1,1]

          [1,3,1,1,1,1,1]

          [1,1,3,1,1,1,1]

  A’A=AA’=[1,1,1,3,1,1,1]

          [1,1,1,1,3,1,1]

          [1,1,1,1,1,3,1]

          [1,1,1,1,1,1,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

  AJ=JA=[3,3,3,3,3,3,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

        [3,3,3,3,3,3,3]

となります.A’は直線と点を入れ替えた双対射影平面です.

 ここでは2次の射影平面の場合でしたが,n次の射影平面の場合,対角成分はn+1となります.対角成分はpiを通る直線の数,非対角成分はpi,pjを通る直線の数を表しているというわけです.

 射影幾何学の有名な定理:デザルグの定理やパップスの定理は有限射影平面でも成立します.なお,n=4k+1,4k+2の場合にn次の射影平面が存在すれば,

  n=x^2+y^2

となる整数が存在するということも証明されています.このことからn=6,14,21,22,・・・の場合,n次の射影平面が存在しないことがわかります.

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