■多元数(その6)
【2】八元数
ハミルトンの有名な四元数は複素数の拡張ですが、さらに、イギリスの数学者ケイリーによって8個の基底元1,i,j,k,l,m,n,oをもつ代数<八元数>も発明されました(1845年)。
i^2=j^2=k^2=l^2=m^2=n^2=o^2=−1,
i=jk=lm=on=−kj=−ml=−no,
j=ki=ln=mo=−ik=−nl=−om,
k=ij=lo=nm=−ji=−ol=−mn,
l=mi=nj=ok=−im=−jn=−ko,
m=il=oj=kn=−li=−jo=−nk,
n=jl=io=mk=−lj=−oi=−km,
o=ni=jm=kl=−in=−mj=−lk
ハミルトンの四元数は乗法の交換法則を満たさない非可換体(斜体)
ab≠ba
ですが,八元数ではさらに乗法の結合法則も破れています.
a(bc)≠(ab)c
しばしば「ケイリー数体」と呼ばれますが,厳密にいうと体ではなく「体もどき」ということになります.さらに、16個の基底元をもつ同様の代数を構成しようと試みられましたが、それは成功するはずはありませんでした。
八元数は,実数単位e0と7個の虚数単位ei(i=1~7)による一次結合Σajejで表されますが,
e0ei=eie0=ei,ei^2=−1,eiej=−ejei
はよいとしても,
eiej=+ek・・・交換則
eiej=−ek・・・反交換則
の組合せは様々です.
また,結合法則に関しても
(eiej)ek=+ei(ejek)・・・結合則
(eiej)ek=−ei(ejek)・・・反結合則
の2つの場合があります.
(eiej)ek=+ei(ejek)・・・結合則
は(i,j,k)のなかに0(実数)が含まれるときと同一の番号があるときには常に成立しますが,(i,j,k)が1〜7のうちですべて異なるときは必ずしも成り立ちません.
そこで,[補]に掲げる例:(i,j,k)=(1,2,3),(1,4,5),(1,6,7),(2,4,6),(2,5,7),(3,4,7),(3,5,6)の場合に結合則を満たすものと決めます.この7組は3ビットの2進数で表し,各々のビットの排他的論理和をとると0になるので便利です.
(1,2,3)=(001,010,011)=0
(1,4,5)=(001,100,101)=0
(1,6,7)=(001,110,111)=0
(2,4,6)=(010,100,110)=0
(2,5,7)=(010,101,111)=0
(3,4,7)=(011,100,111)=0
(3,5,6)=(011,101,110)=0
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