■ヨハン・アルブレヒト・オイラーの不等式(その2)

【1】ウェアリングの問題

 1770年,ウェアリングは4平方和定理を拡張して,

  「任意の整数はたかだか9個の3乗数の和として,あるいは19個の4乗数の和として表される」

ことを証明抜きで主張しました(9三乗数定理,19四乗数定理).これが,有名なウェアリングの問題です.

 g(2)=4はラグランジュにより,g(3)=9はヴィーフェリッヒによって証明されました(1909年).ウェアリングの問題は2次形式ではなく高次形式を扱っていて,多くの数学的思考を刺激しました.そして,1909年,ヒルベルトによって

  「どの数もg個のk乗数の和で表される」

ことが肯定的に証明されています.

  n=x1^k+・・・+xg^k

 ヒルベルトはg(k)の値がkのみによって表されることを証明したのですが,それはg(k)の存在のみを証明したのであって具体的な値を決める方法を示したものではありませんでした.

 1859年,リューヴィルはg(4)≦53を示しました.g(4)=19ですからこの結果は実際とはかなり隔たりがあるのですが,g(4)の限界を与える方法を初めて示したことになります.そのあたりからいろいろな研究がなされることになりました.そして,19四乗数定理:

  「すべての正の整数は19個の4乗数の和で表される」

は1986年に証明されています.つまり,ウェアリングの問題(18世紀)も200年以上かかって解決されたことになります.

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【2】ヨハン・アルブレヒト・オイラーの不等式

g乗数は平方数よりもずっとまばらにしか分布しませんから,以下,37個の5乗数の和,73個の6乗数の和,・・・と続きます.実は,ガウス記号を用いて

  g(k)=[(3/2)^k]+2^k−2

の式が正しいだろうと予想されています.1≦k≦10では

  k  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

  下界 1  4  9  19  37  73 143 279 548 1079

となり,ここに示した値はすべてこの式を満たし,かなりの範囲のところまで正しいことが確認されます.

 11≦k≦17では

  k  11  12  13  14  15  16  17

  下界 2132  4223  8384  16673  33203  66190 132055

  g(k)≧[(3/2)^k]+2^k−2

の不等式を証明したのはオイラーの息子,ヨハン・アルブレヒト・オイラー(1772年)で,この式では等号が成立すると予想されているのです.

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