■15番目の五角形平面充填(その6)

【1】マジョリー・ライス

 ここでは正多角形ではない不規則な凸多角形による平面充填形について考えてみましょう.三角形と四角形の場合は凸でなくてもよいのですが,どんな形の三角形,四角形でも平面を過不足なく敷きつめることができます.凸六角形では本質的に異なる3つのタイプの六角形だけが平面を埋めつくします.また,凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものもうまくいきません.

 五角形は特に興味津々です.正五角形はどうしても隙間があいてしまいますが,凸五角形では,ホームベース形も含めて,現在,14種の平面充填形が知られています.六角形に関しては3種類以外のものは存在しないことが示されていますが,五角形に関しては14種ですべてかどうかはまだ証明されていません.

 五角形のタイル貼りについては数学者のラインハルトや物理学者のケルシュナーが研究していたのですが,このような問題はとかくとり漏らしやすいもので,見逃されているものがあるやもしれません.1975年にはほとんど数学を学んだことのない主婦マジョリー・ライスが「サイエンティフィック・アメリカン」誌の記事に触発されて,五角形で平面を敷き詰めるパターンでそれまで知られていないものを3種類も発見したほどですから・・・.

 彼女は5人の子供の母親で,台所仕事をしながら数学の教授達があり得ないといった新しい五角形タイルを発見したのですが,彼女は高校より上の教育は受けていませんでした.新たに何か学んで新しい発見をするのに何歳になっても遅すぎることはないという教訓です.

 非常に単純だが,深淵な数学的発見が今日なお可能である一つの例として有名な話ですが,まだ新しいタイプが発見される可能性は残されています.興味と熱意と根気のある読者は是非挑戦してみてください.

===================================