■三角形に関する不等式(その5)

 三角形,四角形についての等式・不等式を紹介したい.

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 任意の三角形に対して

  tanα+tanβ+tanγ=tanαtanβtanγ

が成り立つ.

 この式は

  γ=π−(α+β)

として,tanの加法公式を用いることにより容易に証明される.役に立つかどうかは別として,私にとってこの公式は対称性のある美しい公式と感じられる.もちろん,美しく感じるかどうかは主観的であり,強制すべきものではないが,きっと多くの人の美意識にも訴えるに違いない(希望).

 同様に,任意の三角形に対して

  sinα+sinβ+sinγ=4cosα/2cosβ/2cosγ/2

  sin2α+sin2β+sin2γ=4sinαsinβsinγ

  sin3α+sin3β+sin3γ=−4cos3α/2cos3β/2cos3γ/2

  cosα+cosβ+cosγ=1+4sinα/2sinβ/2sinγ/2

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 等式の世界も面白いが,不等式の世界だって奥深いものがある.

 鋭角三角形ならば,算術平均≧幾何平均より

  tanα+tanβ+tanγ≧33√tanαtanβtanγ

前項より,

  tanαtanβtanγ≧33√tanαtanβtanγ

したがって,

  tanαtanβtanγ≧√27=3√3

であるから,

  tanα+tanβ+tanγ≧3√3   (等号は正三角形のとき)

を容易に証明することができる.

 少し気分を変えて,次の不等式はどうだろうか?

(問題)

  sinαsinβsinγ≦3√3/8

(証明)

  2sinβsinγ=cos(β−γ)−cos(β+γ)

           =cos(β−γ)+cosα

  sinαsinβsinγ

 =1/2sinα(cos(β−γ)+cosα)

 ≦1/2sinα(1+cosα)

 これより極大値を計算すると,3√3/8が得られる.なお,この不等式は三角形の外接円,内接円および面積をR,r,△とすれば,

  abc=4R△,(a+b+c)r=2△

また,正弦法則

  a/sinα=b/sinβ=c/sinγ=2R

より,

  abc≦3√3R^3

と同値である.

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(問題)△ABC内の1点をP,面積を△とすると,

  AP+BP+CP≧2√((√3)△)

等号は△ABCが正三角形で,Pが重心のときに限る.

(証明)

 n角形の周の長さが与えられているとき,面積の最大のものは正n角形であるから,

  L^2≧4nStan(π/n)

等号は正n角形に対してのみ成り立つ.

 そこで,Pの辺BC,CA,ABに関する対称点をA’,B’,C’とし,六角形AC’BA’CB’に不等式

  L^2≧4nStan(π/n)

を使えばよい.ここで,L=2(AP+BP+CP),S=2△

 なお,△≧√(27)r^2が成り立つので,

  AP+BP+CP≧6r

これは,エルデシュの定理の特別な場合になっていて,シュライバーの定理とも呼ばれる.

 一方,四角形については,プトレマイオス(トレミー)の定理「円に内接する四角形の対角線の積は,対辺の積の和に等しい」がある.

  AC・BD=AB・CD+BC・DA

 この定理において,もし四角形が長方形ならば

  AC^2=AB^2+BC^2

となり,ピタゴラスの定理に帰着する.

 また,4点が同一円周上にないとき,不等式

  AC・BD<AB・CD+BC・DA

が成り立つ.

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