■三角形に関する不等式(その1)

【1】三角形に関する不等式

 まず,頭の体操からはじめましょう.「正三角形内の任意の点Pから,各辺までの距離をr1,r2,r3とすれば,その和は,点Pの位置にかかわらず,常に一定である.」という問題を解いてみることにします.

 正三角形の1辺の長さが1のとき,

  r1+r2+r3=√3/2

すなわち,この和が正三角形の高さと等しくなることは(小生が勝手に寄木細工定理と呼んでいるものを使って)簡単に求められます.

 次に「正三角形内の任意の点Pから,各頂点までの距離をR1,R2,R3とすれば,その和が最大になるのは点Pが重心に一致するときである.」について考えてみることにしましょう.

 求める点Pをフェルマー点といいます.点Pは三角形ABCの内部にありますが,∠A,∠B,∠C<120°のときには,3頂点に至る距離の和が最小となる点は3辺を等角120°に見込む点です.∠A,∠B,∠Cのいずれかが≧120°のときには,それぞれ頂点A,頂点B,頂点Cになります.したがって,正三角形の1辺の長さが1のとき,

  R1+R2+R3≧√3

より,最小値√3が得られます.

 「A,B,C3軒の家に電線をひきたい.電線の長さを最小にするにはどこの柱を立てればよいか」ではAP+BP+CPを最小にする実用価値のある問題になります.このような最短配線問題は最小木問題(問題の発案者シュタイナーに因んで最小シュタイナー木問題)と呼ばれていますが,VLSI回路を設計するときの最も基本的な技術となっています.

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