■デューラーの八面体(その2)
デューラーによる有名な銅版画「メランコリア」には菱面体のふたつの頂点を切頂した八面体が描かれている。
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この八面体の謎解きについてはいまだに熱い議論の的となっている。
まわりにはいろいろな意味ありげな幾何学的な図形が散らばっていて、4x4魔方陣の数字の配置から製作年は1514年ごろと推測されている。
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デューラーは1471年に生まれ,1528年に没しています.透視図法の発展を促し,有名な版画作品「メランコリアI」は彼の透視図法に対する関心の高さを示しています.メランコリー(黒胆汁質)は初めはよくない気質と考えられていたのですが,ルネサンス時代には芸術家的な気質,創造力に繋がるものとされていたようです.
この版画には幾何学や建築に関係のあるいろいろな品物が描かれています.切頂菱面体(デューラーの八面体)はこの版画の中にある品物のひとつですが,その他に,4次の魔方陣
[16,03,02,13]
[05,11,10,08]
[09,06,07,12]
[04,15,14,01]
も描かれています.
この魔方陣の下の行の真ん中の2つは15と14になっていて,これが製作年の1514年を表していることはよく知られています.4次の魔方陣は一意ではなく,たとえば,
[12,13,01,08]
[06,03,15,10]
[07,02,14,11]
[09,16,04,05]
なども考えられます.4次の魔方陣は有限射影平面と関係していますから,まさにメランコリーの寓意がこれらの品物に託されているというわけです.
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