■グノーモンの謎(その6)

 「ユークリッド原論」第2巻に収蔵されているグノーモンについて,グノーモン関連の定理は「幾何学的な代数論」であるととか,いろいろな説(謎)がある.

 

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【3】グノモン分解による整除性の証明

 項比は

  gk+1/gk=((k+1)^2)!/(k^2)!・(k+1)^2・・・(2k)^2・(2k+1)

  ((k+1)^2)!/(k^2)!=(k^2+1)(k^2+2)・・・(k^2+2k+1)

 したがって,連続する2k+1個の自然数の積

  (k^2+1)(k^2+2)・・・(k^2+2k+1)

には(k+1)の倍数が少なくとも2個,・・・,(2k)の倍数が少なくとも2個,(2k+1)の倍数が少なくとも1個あるかという問題になる.

 連続するk個の自然数の積はk!で割り切れることを使って証明を試みたが,うまくいかなかった.無駄があるためである.しかし,グノモンを使うとうまく証明できるのである.

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 (k+1)!をグノモン分解するほうがわかりやすい.すなわち,

  (k+1)^2=1+3+・・・+(2k−1)+(2k+1)

として,k+1番目のグノモンが,

  (k^2+1)(k^2+2)・・・(k^2+2k+1)

というわけである.

 このグノモンにはkで割ると1余る数(nk+1),kで割ると2余る数(nk+2),・・・が順に並ぶが,(k+1)の倍数,(k+2)の倍数,・・・が順に並ぶわけではない.そこで,次のように考えることにする.

 n(k+1)≦k^2+1となる最大の数nは,n=k−1であるから,連続する2k+3個の自然数よりなる区間[k^2−1,k^2+2k+1]には,(k+1)の倍数が少なくとも2個あることがわかる.(k+1)の倍数はk+1個ごとに1個存在するからである.区間[k^2−1,k^2]には存在しないから,区間[k^2+1,k^2+2k+1]には,(k+1)の倍数が少なくとも2個あることになる.

 n(k+2)≦k^2+1となる最大の数nは,n=k−2であるから,連続する2k+5個の自然数よりなる区間[k^2−4,k^2+2k+1]には,(k+2)の倍数が少なくとも2個あることがわかる.もっと狭めて区間[k^2+1,k^2+2k+1]には(k+2)の倍数が少なくとも2個あることになる.

 以下同様であるが,(2k+1)の倍数は2k+1個ごとに1個存在するから,連続する2k+1個の自然数よりなる区間[k^2+1,k^2+2k+1]には少なくとも1個存在する.

 これで

  (k^2+1)(k^2+2)・・・(k^2+2k+1)

には(k+1)の倍数が少なくとも2個,・・・,(2k)の倍数が少なくとも2個,(2k+1)の倍数が少なくとも1個あることが証明できたことになる.

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【4】雑感

 ユークリッド原論第二巻は無用の長物としてしばしばこき下ろされるが,後世に応用される有用な定理を含んでいたわけだ.歴史というのは難しいものだ.

 

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