■太鼓の形を聴けるか? (その5)
1965年,カッツは形状の異なる2つの太鼓を音で区別できるかどうかを問うた.それは実質的に面積や周長が等しい等スペクトル領域がありうるかという問題であった.
1992年にゴードン,ウェブ,ウォルパートは砂田利一の定理に基づいて,等スペクトル領域の具体例を示した.それは7個の直角二等辺三角形を貼り合わせたものであった.このうち,5個は共通していて,2個だけが異なっている.
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ビューザーによる,等スペクトル領域のやさしい存在証明を示したい.
7個の正三角形を貼り合わせたプロペラ型の領域を考える.左巻きプロペラ,右巻きプロペラ領域を構成する正三角形をすべて同じ形の不等辺三角形、たとえば、(60°,45°,75°)に置き換えるのであるが,異なる形ができる.
左巻きプロペラからは,7個ある三角形に制限したラプラス作用素の固有関数をa,b,c,d,−A,−B,−Cとする.ディリクレの境界条件より固有関数φは消失しなければならない.
右巻きプロペラの真ん中にある三角形に関数A+B+Cを与えると,境界をまたぐたびに−d−B−b→C+a+bなど,次々に接続する.
ここで考えたことは,左巻きプロペラのλ固有空間から右巻きプロペラのλ固有空間への線形写像を定義したことに他ならない.したがって,2つのプロペラはディリクレの境界条件の下で等スペクトル領域であるが,実はノイマンの境界条件の下でも等スペクトル領域である.これにより,異なる形の等スペクトル領域を構成することができるのである.
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[Q]7個の直角二等辺三角形を貼り合わせた形は何種類あるか? ただし,長さ1の辺同士,長さ√2の辺同士を貼り合わせるものとする.
[Q]7個の正三角形を貼り合わせた形(heptiamond)は何種類あるか?
後者の答えは24種類である.そのうち,ひとつだけがタイルにならない.
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正三角形を6個集めて作られる図形(ヘキサモンド)は全部で12種類ある.
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