■四元数と八元数(その9)
【1】2平方恒等式(ブラーマグプタ,フィボナッチ)
複素数x=a+biの絶対値は|x|^2 =a^2 +b^2 =(a+bi)(a−bi)で与えられますが,ここで,数の体系に「積のベクトルの大きさはベクトルの大きさの積に等しい」という条件が要請されているとしましょう.
複素数x=a+biとy=c+diの積
xy=(a+bi)(c+di)=(ac−bd)+(ad+bc)i
は同じ空間内のベクトルとして表されますが,
(a^2 +b^2 )(c^2 +d^2 )=(ac−bd)^2 +(ad+bc)^2
より,|x|・|y|=|xy|が満たされていることがわかります.
フィボナッチの等式としてよく知られている恒等式
(a^2 +b^2 )(c^2 +d^2 )=(ac−bd)^2 +(ad+bc)^2
は簡単に確認できます.この公式は2つの整数がともに平方数の和の形をしているなら,その2数の積も平方数で表されることを示していて,複素数と2平方和問題との関連を示しています.
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【2】4平方恒等式(オイラー)
4平方和問題(a^2 +b^2 +c^2 +d^2 )(p^2 +q^2 +r^2 +s^2 )=x^2 +y^2 +z^2 +w^2 は
x=ap+bq+cr+ds,
y=aq−bp+cs−dr,
z=ar−bs−cp+dq,
w=as+br−cq−dp
とおくと成り立ち,4つの平方数の和となっている数は積の演算で閉じていることを示しています.
しかし,3平方和問題(a^2 +b^2 +c^2 )(x^2 +y^2 +z^2 )=u^2 +v^2 +w^2 は2平方和,4平方和の場合のようなわけにはいきません.3平方和の積が必ずしも3平方和とならないからです.
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【3】8平方恒等式(デゲン,1818年)
【4】n平方恒等式(フルヴィッツ,1898年)
|a|・|b|=|c|,すなわち
(a1^2+a2^2+・・・+an^2)(b1^2+b2^2+・・・+bn^2)=(c1^2+c2^2+・・・+cn^2)
の恒等式はn=1,2,4,8に対してだけ満たされるという驚くべき結果が19世紀末,フルヴィッツにより証明されています(1898年).
したがって,ある条件のもとで,数の体系は八元数までですべてであることが知られていて,数の系列は実数(一元数)→複素数(二元数:ガウス)→四元数(ハミルトン)→八元数(ケイリー)というようになっているのです.
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