■もうひとつの分解合同定理(その15)

1914年,ハウスドルフは球面を有限個の(非可測な)断片に分割し再配列したとき,もとの球面と同じ面積をもつ2つの球面ができるようにすることが可能なことを示しました.1924年,バナッハとタルスキーはハウスドルフが考案した逆説を改良し,球を可算個の小片に分割し再結合させると元と同じ大きさの2つの球を作ることを示しました.したがって,元と同じ球体を好きな個数だけ作ることができることになります.

 バナッハ・タルスキーの可算分解合同定理を言い換えれば,空間において面積と体積は非可測な断片に分解することによって保存されないというものです.このあまりにも奇妙な結論からパラドックスと呼ばれますが,れっきとした現代数学の定理です.数学が「無限」を扱うようになったために生ずる奇妙な定理なのですが,バナッハ・タルスキーの定理は「選択公理」を仮定しないと証明できないのです.

[Q]「選択公理」を仮定しないで、バナッハ・タルスキーの定理を証明できるか? (Marczewskiの問題)

1992年、DoughertyとForemanによって肯定的に解決された(選択公理に依存しない正則開集合を用いた稠密的分解合同の実現)

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