■もうひとつの分解合同定理(その9)

Tomkowicz, Wagon著、佐藤健治訳「バナッハ・タルスキーのパラドックス」共立出版が刊行された。 Banach-Tarski Paradox第二版では、内容は大幅に改訂されたようである.

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[1]面白い書き出しから始まる。

デロスの島人「どうすれば疫病をなくせるか?」

デルフォイの神託「立方体の祭壇の体積を2倍にせよ」

バナッハとタルスキー「選択公理を使ってよいか?」

[2]訳者の佐藤先生とは幾何学研究会で顔なじみ。訳本の原著については、阪本ひろむ氏から聞いていたので、購読することにした。序文にお二人の名前が出てくるのはうれしいかぎりである。

[3]私自身、数学出身ではないので、選択公理云々になるとさっぱりわからないのですが、佐藤健治先生によると

  https://www.tamagawa.ac.jp/college_of_engineering/news/management/detail-203.html

に説明を書いたので、選択公理はそんなに気にしなくても気分はわかるはずとのことであった。

[4]そのなかに「Satoの回転」というのがでてくる.1995年にK.Satoにより発表された球の回転である.Satoの回転により,球面上の有理点の集合が選択公理なしに逆説的に分解されるとのことである.佐藤健治先生に確認したところ、先生が証明した定理2.8の回転を原著者が「Satoの回転」と呼んでくれたとのことであった。

[5]この本の主題からは少しずれていますが、四面体の鎖の話もおもしろい。正四面体や等面四面体のらせん状構造物や環状構造物はよく作っていた関係でおもしろく拝読させていただきました。2015年当時(代数計算できない)普通のパソコンを使って、プログラムを組んで正四面体40個、48個、84個などの(近似的な)環状構造物を設計したりしておりました。読者も環状構造物を実際に作成できたらとても楽しいのではないかと思います。代数計算法が紹介されていたので、実際にトライすることも可能と思われました。

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