■もうひとつの分解合同定理(その7)
Tomkowicz, Wagon著、佐藤健治訳「バナッハ・タルスキーのパラドックス」共立出版が刊行された。
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[1]当該書籍には、空間の回転群をつかった証明の概要が説明され、そのためフラクタルを連想させるような図形やポアンカレ円板上の天使と悪魔が掲載されている。(バナッハのもとの論文はそのようなものは一切無いという。) 図形の合同を、「群」を使って説明している。(バナッハは、あくまでも、群の概念を使わずに「合同」を定義している。しかも、論文中に、群という言葉は一度も使われない。おそらく、群論の言葉を使わずにハウスドルフのパラドックスを証明すると冗長になるのだろう。)
[2]ハウスドルフとシェルピンスキの論文が引用されていて、これらの論文のなかに選択公理がつかわれてるのであろう。結局、バナッハ・タルスキのパラドックスのために必要な選択公理はハウスドルフの結果(ハウスドルフのパラドックス)を引用した箇所のみ。(バナッハの原論文では、「ハウスドルフの結果により」と一言あるだけ。一読しただけでは、選択公理をどこで使っているかは分からないという)。
[3]集合演算の式が、沢山でてきて、いつの間にか定理が証明されてしまった感じ。(狐につままれたような・・・これは、「証明を理解した」ことになるのだろうか?)
[4]バナッハ・タルスキのパラドックスは、いったんは忘れられた。しかし、豆と太陽は同じ大きさ?というstatementがわかりやすいため、数学の専門家以外からも、注目されるようになった。(当時のポーランド学派の論文には、これに匹敵するような奇怪な定理は結構あるらしい。)
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