■もうひとつの分解合同定理(その6)
1914年,ハウスドルフは球面がK=A+B+C+Qに分解される,A,B,C,B+Cは合同,Qは可算集合であることを証明した.これからAの面積は球面の面積の1/3とも1/2ともなるので矛盾する.
1953年,シェルピンスキーは,ハウスドルフが考案した逆説を改良し,球面(と球)を有限個の小片に分割し再結合させると元と同じ大きさの2つの球面(と球)を作ることを示しました.したがって,元と同じ球体を好きな個数だけ作ることができることになります.(シェルピンスキーはハウスドルフ,バナッハ・タルスキー両方のパラドックスを改良をしたことになる.)
[補]1947年.ロビンソンは単位球を5つに分解して,組み換えると単位球が2つできることを示した.この5つのうち,ひとつは1点である.さらに,1956年,デッカーとグローはこの分割のどの部分も連結であるようにできることを示した.
[補]タルスキーの問題「円板を有限個の破片に分けて,集めて同じ面積の正方形にすることができるか」は,1990年になっておよそ10^50個の破片を使って可能であることがラスコヴィッチによって証明された.ある意味,円積問題(円の面積に等しい正方形を作図する)は不可能ではなかったことになる.
[補]WagonのBanach-Tarski Paradox第二版では、内容は大幅に改訂されたようである.そのなかに「Satoの回転」というのがでてくる.1995年にK.Satoにより発表された球の回転である.Satoの回転により,球面上の有理点の集合が選択公理なしに逆説的に分解されるとのことである.
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四元数ω=(1+i+j+k)/2は単位四元数である.一方,軸n周りのθ回転は単位四元数
q=(cosθ/2,sinθ/2n)
で表せるから
θ/2=π/3,n=(1/√3,1/√3,1/√3)
すなわち,(1,1,1)方向を軸とする120°回転に対応している.
同様に,
ω^2=(−1+i+j+k)/2
はθ/2=2π/3,n=(1/√3,1/√3,1/√3)より(1,1,1)方向を軸とする240°回転,
ω^4=−(1+i+j+k)/2
はθ/2=−π/3,n=(1/√3,1/√3,1/√3)より(1,1,1)方向を軸とする−120°回転,
ω^5=(1−i−j−k)/2
はθ/2=−π/3,n=(1/√3,1/√3,1/√3)より(1,1,1)方向を軸とする−120°回転.
q=±1
はθ/2=±π,n=(0,0,0)より無回転(恒等写像)であるが,
q=±i
はθ/2=±π/2,n=(1,0,0)より(1,0,0)方向=x軸を軸とする±90°回転に対応している.
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