■ベルヌーイ数とクラウゼン・フォン・シュタウトの定理(その2) 

 ベルヌーイ数が,整数論にとって欠かすことができない存在なのは,ゼータ関数との関係にその理由があり,リーマンのゼータ関数

  ζ(s)=Σ1/n^s=Π(1−p^(-s))^(-1)

とベルヌーイ数との間には,次の公式が成り立ちます.

  Π1/(1−p^(-2m))=ζ(2m)=Bm/2・(2π)^(2m)/(2m)!

 

 また,どんなBn/nの約数にもならない素数は正則素数と呼ばれるのですが,与えられた素数pの正則性を確かめるためには,クンマーの合同式により,

  1≦n≦(p−1)/2

について,Bnの分子を調べればよいことになります.

 

 1850年,クンマーはどんなBn/nの分子の約数にもならない素数(正則素数)をベキ指数とする場合に,フェルマーの最終定理を証明して以来,正則素数の判定にも顔を出す興味深い数となりました.(クンマーは円分体の整数論の研究に専念し,正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立することを示したのですが,正則素数pはBp-3 までのベルヌーイ数Bkの分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.)

 

 Bn/nを既約分数で表したときの分母を求めることは,1840年,クラウゼンとフォン・シュタウトの定理により,厳密に求めることが容易になったのですが,Bn/nの分子はnに対して急激に増加するため,計算はずっと難しかしくなります.

 

 以下に,nが小さいときの表を掲げておきますが,

  Bn/nの分子>Bn/n>4/√e(n/πe)^(2n-1/2)

より,

  (n/πe)^(2n)

のオーダーとなりますから,n>πe=8.539・・・のとき,分子は急激に大きくなることが示されます.

 

  n  Bn/nの分子  n  Bn/nの分子

 ≦5    1      9     43867

  6   691      10    174611

  7    1      11     77683

  8   3617      12   236364091

 

 この分子の値は,平行化可能な多様体の境界となるエキゾチック(4n−1)次元球面の微分同相からなる群が,位数

  2^(2n)(2^(2n-1)−1)・Bn/nの分子

の巡回群であることから,微分トポロジーの研究者の注意を引くものとなっていたのですが,B7の分子が7で割り切れることが,ミルナーがエキゾチック球面の証明に用いた方法に繋がったのです.

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