■ベルヌーイ数とクラウゼン・フォン・シュタウトの定理(その1)
【1】ベルヌーイ数
ベルヌーイ数は,数多くの魅惑的な整数論的特性をもっていて,元来はベキ乗和の公式
Σk^s=1^s+2^s+3^s+・・・+n^s
を求めるために1713年に考案されたものですが,次のようなベキ級数展開に現れる係数として定義されます.
x/(1−exp(-x))=1+1/2x+Σ(-1)^(k-1)Bk/(2k)!x^2k
同じことですが,ベルヌーイ数は
x/tanhx=xcoshx/sinhx
=1+B1/2!(2x)^2−B2/4!(2x)^4+B6/2!(2x)^6−・・・
あるいは,x/tanhx=2x/(exp(2x)−1)+xより,
x/(exp(x)−1)=1−1/2x+B1/2!x^2−B2/4!x^4+B3/6!x^6−・・・
の係数として得られます.
さらに,ベルヌーイ数を用いたベキ級数展開をいくつか掲げておきます.
a)1/sinh2x=1/tanhx−1/tanh2xより,
x/sinhx=1−(2^2−2)B1/2!x^2+(2^4−2)B2/4!x^4−・・・
b)1/tanhx=2/tanh2x−1/tanhxより,
tanhx=2^2(2^2−1)B1/2!x−2^4(2^4−1)B2/4!+・・・
c)tanhix=itanxより,
tanx=2^2(2^2−1)B1/2!x+2^4(2^4−1)B2/4!+・・・
母関数は,整数の性質を調べるのにベキ級数の問題(関数論)に翻訳することによって答えを見つけることができる強力な発見手段となっているのですが,これらの式はベルヌーイ数の別の形の母関数表示を与えているものと考えられ,実際,数論的に面白い性質を証明するのに利用することができます.
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【注】これと混乱しやすい記号も慣用的に使用されているので,注意が必要です.
たとえば,「ベルヌーイ数とは,x/(exp(x)−1)
=1+B1/1!x+B2/2!x^2+B3/3!x^3+・・・
=ΣBn x^n/n!
によって定義される有理数で,x/(exp(x)−1)は数列{Bn}の指数型母関数になっています.」
と書かれている場合は,奇数番目を飛ばさずに定義されているため,B1=−1/2で,
x/(exp(x)−1)−B1/1!x=x/2・(exp(x)+1)/(exp(x)−1)
は偶関数ですから,奇数項は第一項以外は0で,偶数項はB2=1/6,B4=−1/30,B6=1/42,B8=−1/30,B10=5/66,B12=−691/2730,B14=7/6,B16=−3617/510,B18=43867/798,・・・
あとは分子が急速に大きくなり,たとえば,B32=−7709321041217/510,B34=2577687858367/6です.分母は必ず6で割り切れます.この場合,ベルヌーイ数については,再帰公式
(B+1)^n-B^n=0
が成り立ちます.ただし,2項展開してからB^nをBnで置き換えることにします.
数論の本では,ベルヌーイ数の定義として,これを採用しているものが多いのですが,この場合,よく知られた公式は,
B2k=(-1)^(k-1)・2(2k)!/(2π)^2k・ζ(2k)
と表されます.
定義より,ベルヌーイ級数は,べき級数
(exp(x)−1)/x=1+1/2!x1 +1/3!x2 +1/4!x3 +・・・
の反転級数と考えることができます.
exp(x)=1+1/1!x+1/2!x2 +・・・
ですから,
x/(exp(x)−1)
=x/(x+x^2/2!+x^3/3!+・・・)
=1/(1+x/2!+x^2/3!+・・・)
=1-(1+x/2!+x^2/3!+・・・)+(1+x/2!+x^2/3!+・・・)^2-・・・
=1-1/2x+1/6x^2-1/30x^4+・・・
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また,ベルヌーイ数と似たものにオイラー数やタンジェント数があります.オイラー数は,
sechx=ΣEn/n!x^n
=E0/0!+E2/2!x^2+E4/4!x^4+・・・
で,べき級数
coshx=1+1/2!x^2+1/4!x^4+1/6!x^6+・・・
の反転級数として定義されます.
オイラー数では再帰公式
(E+1)^n-(E−1)^n=0
が成り立ちます.
E0=1,E2=-1,E4=5,E6=-61,E8=1385,E10=-50521,・・・
E1=E3=E5=・・・=0
一方,三角関数:tanxのベルヌーイ数を用いた展開
tanx=Σ(-1)^(n-1)2^2n(2^2n−1)B2nx^(2n-1)/(2n)!
におけるx^(2n-1)/(2n−1)!の係数
Tn=(-1)^(n-1)2^2n(2^2n−1)B2n/2n
はタンジェント数と呼ばれ,ベルヌーイ数の別の形の母関数表示を与えてくれます.
すなわち,三角関数の展開公式にもベルヌーイ数がでてくるのですが,三角関数を楕円関数に置き換えても,展開係数はベルヌーイ数と似たような数論的性質をもってきます.これは三角関数についての現象を一般化するときの常套手段なのですが,その展開係数がフルヴィッツ数です.
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