■アポロニウスのガスケット(その6)

【2】ファレイ数列とディオファントス近似

 ファレイ数列では相隣り合う2項[m1/n1,m2/n2]の分母と分子からなる行列式の値m1n2−m2n1は±1である.すなわち,交差積m1n2とm2n1は連続する整数になる.

 また,フォードの円列では(m1/n1,1/2n1^2)を中心とする半径1/2n1^2の円と(m2/n2,1/2n2^2)を中心とする半径1/2n2^2の円が接することになる.フォードの円列は重なり合うことはなく,この2つの円の間に入る一番大きな円はその中間分数(m1+m2)/(n1+n2)の円である.

 フォードの円列において,直線y=1は∞=1/0に対応すると解釈しよう.すると,有理数p/qに対応するフォードの円は半径1/2q^2で,x軸上の点p/qにおいて接する円となる.

 同様に分母が高々dの有理数からなる位数dのファレイ数列の各項は1/d^2≦y<1/(d+1)^2の任意の水平線と交わるフォードの円と対応することになる.

 これにより,いくつかのディオファントス近似に関する定理は,(双曲)幾何学的に自明なものとなる.たとえば,任意の無理数αに対して

  |α−p/q|<1/2q^2

を満たすものが無数に存在するという定理がそうである.直線x=αが連接する2つのフォードの円p/q,r/sのどちらか一方に交わる.それがp/qであるとすると|α−p/q|<1/2q^2が成り立たなければならないからである.

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