■円定理のいろいろ(その4)

【3】おまけ(数珠つなぎの円板)

 1世紀半前(1856年)の和算の有名な問題に「数珠つなぎの円板」がある.

(Q)同じ大きさの円がn個連結して輪を作っている.円の中心を結んでできる多角形の内側にある面積と外側にある面積を求めよ.

(A)n個の円は互いに重なり合わず接しているから円の中心を結んでできる多角形はn角形である.その内角の和はπ(n−2)となるが,内側にある扇形の面積は中心角に比例するから,これは円

  π(n−2)/2π=n/2−1

個分の面積に相当する.したがって,外側にある面積は円n/2+1個分である.

 円が何個つながっていようともnに関係なく外側の面積は内側の面積よりも常に円2個分広いわけである.このことは少なくとも私にとっては意外な結果であり,いまでも強く印象に残っている.

 ところで,この問題を解析的に解こうとすると(グレブナー基底を用いた)ロボットアームの可動範囲の特定にも応用できそうな現代的な問題になる.以下,その概略を述べてみよう.

 単位円(半径1)の場合について考えてみるが,円の中心を(xi,yi)とし,(yi+1−yi)/(xi+1−xi)=tanθiとおく.(x1,y1)=(0,0),(x2,y2)=(2,0)として標準化するが,

  x1=xn+1=0,y1=yn+1=0,cosθ1=1,sinθ1=0

 隣り合う円は接することより

  xn+1−xn=2cosθn,yn+1−yn=2sinθn

  xn=2Σcosθn,yn=2Σsinθn

ここで,円が連結して輪を作っていることより

  (Σcosθn)^2+(Σsinθn)^2=1

  cosθ2+cosθ3+・・・+cosθn=−1

  sinθ2+sinθ3+・・・+sinθn=0

 また,円同士が互いに重ならないことから

  (xj−xk)^2+(yj−yk)^2≧1

このことから,たとえばn=4では

  cos(θ2−θ3)≧−1/2,cos(θ3−θ4)≧−1/2

  cos(θ2−θ3)+cos(θ3−θ4)+cos(θ4−θ2)≧−1

  cosθ2≧−1/2,cosθ2+cosθ3+cos(θ2−θ3)≧−1

など多くの付帯条件が成立することが必要になる.

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