■円定理のいろいろ(その3)

【2】円被覆定理

 これらの中で5円定理だけが接円定理ではなく、円同士が重なり合った交円定理になっています.この定理はn=3,7,9,・・・でも成立するのでしょうか?

 その問題は読者に委ねることにして,ここでは5円定理に関連して半径1の円の円周をその円周上に中心をもつ半径rの円板で覆うのに必要な円板の個数νを求めてみることにします.

 半径rの円を考えると,2円の中心間距離が2rより小さいとき2つの円は互いに重なり合うことになります(2rで接し,2rより大きいと離れる).しかし,この問題では単純に重なり合うだけではないのでもう少し複雑な計算が必要になります.円板の中心が円周のn等分点にあるとして,隣の円との交点が単位円周上の連接する2n等分点になければなりません.

 半径rの円板の中心を結ぶ弦に対する単位円の中心角をθとすると,円周角はθ/2,したがって,劣弧に対する円周角はπ−θ/2となって,

  cos(θ/2)+rcos(π/2−θ/4)=1

  1−2{sin(θ/4)}^2+rsin(θ/4)=1

  sin(θ/4)=r/2

  θ=4arcsin(r/2)=2arccos((2−r^2)/2)

 単位円周を被覆するのに必要な円板の個数νは2πをθで割った答えを切り上げて得られますから,[・]をガウス記号として−[−2π/θ]より

  r≧2のとき,ν=1

  √2≦r<2のとき,ν=2

  r<√2のとき,ν=−[−π/2arcsin(r/2)]

で与えられることがわかります.以下,数値計算で求めると

  1.00≦rのとき,ν=3   0.45≦rのとき,ν=7

  0.77≦rのとき,ν=4   0.40≦rのとき,ν=8

  0.62≦rのとき,ν=5   0.35≦rのとき,ν=9

  0.52≦rのとき,ν=6   0.32≦rのとき,ν=10

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 ところで,1つの10円玉を机の上において,それと触れ合うようにかつお互いに重ならないようにして,6個の10円玉を置くことができます.次に円が重なることは許す代わりに,円の中心が他の円の外にあるという条件をつけてr=1の円被覆問題を考えることができます.

  [参]吉川敦「無限を垣間みる」牧野書店

には多くの円被覆問題が掲載されていますが,ここでは結果だけを紹介することにします.

(1)原点から1.43の距離にある半径1の円板8個は単位円周を被覆することができる.9個にすると中心点が他の円の内部にきてしまう.

(2)中心が他の円の内部に来ないようにして,単位円周を被覆する単位円板を18個まで配置することができる.

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