■二項係数の整除性(その5)

【1】ウォルステンホルムの定理

 ウォルステンホルムの定理(1862年)

 「pが2,3以外の素数ならば有限調和級数(既約分数)

  1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)

の分子はp^2で割り切れる.」

 たとえば,p=5のとき,この分数は25/12となり,その分子はp^2で割り切れる.この問題は素数pによる整除性ではなく,素数の平方p^2による整除性なのでかなり難しい問題である.

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 「p>3が素数ならば

  S=((p−1)!)^2(1+1/2^2+1/3^2+・・・+1/(p−1)^2)

はpで割り切れる.」

 「pが素数でp>5であるときに限り,

  1+1/2^3+1/3^3+・・・+1/(p−1)^3

の分子はp^2で割り切れる」

 「pが素数でp>7であるときに限り,

  1+1/2^4+1/3^4+・・・+1/(p−1)^4

の分子はpで割り切れる」

 1819年,バベッジは

  (2p−1,p−1)=1   (mod p^2)

に気づきましたが,1862年,ウォルステンホルムは

  (2p−1,p−1)=1   (mod p^3)

を証明したことになります.

 一般に,pを素数,kをp−1で割り切れない正の整数とするとき,

  1+1/2^k+1/3^k+・・・+1/(p−1)^k

の分子はpで割り切れる

 =1+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k

がpで割り切れることが示されています.

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【2】二項係数の整除性

 1862年,ウォルステンホルムは

  (2p−1,p−1)=1   (mod p^3)

を証明しました.これは(mod p^3)合同式ですが,モーリーの合同式

  (−1)^(p-1)/2(p−1,(p−1)/2=4^(p-1)   (mod p^3)

も同様です.ここでは4次以上のベキに拡張してみます.

[1]リュカの定理(1872年)

pを素数,0≦q<p,0≦r<pとする.

(pn+q,pk+r)=(n,k)(q,r) mod p

[2]ヤコブスタール(1952年)

pを素数,p≧5とする.

(pn+q,pk+r)−(n,k)=0 mod p^3

[3]クペルベルグ(1999年)

pを素数,(2p,p)=(2,1)=0 mod p^4とする

(pn,pk)=(n,k) mod p^4

[4]シュワルツ(1959年)

pを素数,p≧5とする.

(p^2,p)=(p,1)=0 mod p^5

[5]ツイーヴ(2000年)

pを素数,p≧5とする.

(np^m,kp^m)=(np^m-1,kp^m-1) mod p^3m

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