■算術幾何平均の不等式(その2)

 aがx^2=2の解ならばa=2/aが成り立ちます.aがいくらか不正確,たとえば過小評価であるならば,2/aは過大評価となります.過小評価と過大評価の中間(算術平均)はaと2/aのいずれよりもよい評価となります.

 かくして算術平均:

  an+1=1/2(an+2/an)

によって定義される数列は√(2)に収束することになります.この場合,2の平方根をニュートン法x:=x-f(x)/f'(x)で求めるのと同じことになります.ニュートン法の幾何学的意味は「初期値x0における関数の勾配を求めて,接線とx軸の交点を求める.この点において,同様の作業を行うとxは順次解に近づいていく.」と解釈されます.

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 次に,算術平均に加えて,幾何平均も考えることにします.

「2数a0,b0をとり,それらの算術平均a1=(a0+b0)/2,幾何平均b1=√a0b0を計算する.次に,a1,b1の算術平均と幾何平均を計算し,a2=(a1+b1)/2,b2=√a1b1とする.すると,anとbnは急速に同じ極限M(a,b)に到達する.」

(証明)

a0>b0とする.

a1=(a0+b0)/2<(a0+a0)/2=a0

b1=√a0b0>√b0b0=b0

a1−b1=(a0+b0)/2−√a0b0=1/2(√a0−√b0)>0

帰納的に

a0>・・・>an >an+1>bn+1>bn >・・・>b0

より数列{an},{bn}は単調数列となり,同じ値に収束することがわかる.

 このように,1組の数(a,b)に対して,算術および幾何平均を考えて,

  (a,b):=((a+b)/2,√(ab))

と繰り返す算法を算術幾何平均法と呼びます.

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an+1−bn+1<1/2(an−bn)

より2つの数列は急速に接近します。

次の等式はこの不等式を精密にしたものです。

an+1−bn+1<1/2{(an−bn)/(√an+√bn)}^2

右辺に現れる2乗のおかげで、算術幾何平均法の近似における正確な値の桁数は1項ごとにほぼ倍になるというわけです。

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