■2体問題と3体問題(その1)

ニュートンは2つの天体の間の運動方程式(微分方程式)を積分することによって解き、安定な周期解となることを導き出しました。この解がケプラーの法則です。次に、3つの天体間の運動方程式、すなわち3体問題(例えば、地球と太陽と木星しかない宇宙で、これら3つの星の運行を決める)に関心が移ってくるのは当然のことでしょう。ところが、天体の数が3つになると複雑でお手上げになることをご存じでしょうか。

 ニュートンの後継者たちは、物体が3つ以上ある系についても運動方程式を積分して解くことを試みたのですが、結局、積分不能で行き詰まってしまいました。3体問題の運動方程式を書くのは容易ですが、それを解くのは非常に難しく、方程式を正確に解く公式をどうしても見つけられなかったのです。2体問題は可積分であるのに対し、3体問題の技術的な困難は、ニュートンから2世紀以上経てもなお完全な答えは見つからなかったのですが、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ポアンカレは3体問題を積分法で解くことは不可能であることを証明しています。

 3体問題は可積分でないという不存在証明が微分方程式論など数学に与えた影響は大きなものがあります。

===================================