■パップス・パスカル・ケイリー・バカラック(その2)

【3】3次曲線の性質

さらに,パスカルの定理には3次曲線の構造がはいることが明らかになりました.3次曲線とはf(x,y)=0が2変数x,yの3次あるいは3次以下の方程式で与えられた曲線

  a1x^3+a2y^3+a3xy^2+a4x^2y+a5x^2+a6y^2+a7xy+ax8+a9y+a10=0

で,項数は10になります.4次曲線は項数15,5次は項数21・・・平面内n次曲線f(x,y)=0の一般式の項数は,重複組み合わせ

  3Hn=n+2Cn=(n+2)(n+1)/2

で計算されます.

n次平面代数曲線の方程式f(x,y)=0は,(n+1)(n+2)/2個の係数をもっていますが,定数を掛けても曲線は変わりませんから,n次曲線は(n+1)(n+2)/2−1=n(n+3)/2個のパラメータに依っていることになります.そこで,平面内に与えられたn(n+3)/2個の点(xi,yi)を通るという条件によって曲線を決定するという問題が自然に提起されます.

 たとえば,オイラーの定理とは「2つの3次曲線が9点で交わっているとき,9個の交点のうち8個を通る3次曲線は残りの1点をも通る」というものですが,一般に,2つのn次曲線f(x,y)=0とg(x,y)=0がn^2個の点で交わっているとします.これらのn^2個の交点中,n^2+n−2個の交点を通るn次曲線は残りのn−2個の点も通り,その曲線は

  f(x,y)+tg(x,y)=0

で表されます.

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【4】パスカルの円錐曲線定理の拡張

 オイラーの定理の重要な系がパスカルの拡張形定理「2つの3次曲線が9点で交わっているとき,9点中6点がひとつの2次曲線上にあれば,残りの3点は1直線上にある」です.

(証)円錐曲線上に6点を定める.3次曲線E1,E2がこれら6点を通るとき,E1,E2はさらに3点R,S,Tで交差するが,これらの交点は同一直線上にあることを証明してみます.交点は勝手な配置が許されるのではなく,拘束条件を満たすように配置されるのですが,この定理の場合,円錐曲線:Q(x,y)=0,E1:F(x,y)=0,E2=G(x,y)=0,R,Sを通る直線:L(x,y)=0とすると,

  G(x,y)=λF(x,y)+μQ(x,y)L(x,y)

の形で与えられることから,R,S,Tが直線上に並ぶことが証明されます.

 3次曲線E1,E2は一般に9個の交点をもちますから,パスカルの定理はこれより得られます.また,パップスの定理も3次曲線が直線に退化した特別な場合:(ax+by+c)(dx+ey+f)(gx+hy+i)=0とみなすことができます.

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