■モーデル・ファルティングスの定理(その7)
1920年,イギリスの数学者モーデルは
ax^4+bx^3z+cz^2y^2+dx^3y+cy^4=0
のように3変数4次不定方程式には整数解が有限個しかない,さらに4次以上何次になってもそうであろうと予想しました(モーデル予想).
変数を複素数の範囲で考えると,楕円曲線y^2=x^3−x+9はトーラス,x^4+y^4−1=0は3重トーラスになるのですが,浮輪の穴の数によって方程式の解の様子が変化していくことをモーデルは予想したのです.
モーデル予想は50年以上にわたって未解決であったのですが,1983年,ドイツの数学者ファルティングスがこの予想を解決しました.
「種数が2以上の代数曲線(超楕円曲線)は有理点を有限個しかもたない.」
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フェルマーの最終定理『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない.』を解くことは,2変数n次多項式f(x,y)=x^n+y^n−1=0に,有理数解があるか,すなわち有理点をもつかどうかを考える問題に対応します.
モーデル・ファルティングスの定理によってフェルマーの方程式に解があるとすれば高々有限個しか解がないことはわかりましが,1つもないかどうかはわかりません.しかしながら,モーデル・ファルティングスの定理より,有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり,直線(種数0)か,円錐曲線(種数0)か,楕円曲線(種数1)に限られてきます.
また,リーマン・フルヴィッツの公式より,フェルマー曲線x^n+y^n=1は種数が(n−1)(n−2)/2で,これはn=3のとき1ですが,n≧4のときは2以上となりますから,そこでフェルマーの予想を征するために必要となるのが楕円曲線であったというわけです.
こうして,1970年代,フェルマーの問題を征するために必要となるのが楕円曲線であることが明らかになりました.楕円曲線には,楕円曲線と三点で交わる直線で,そのうちの二つの交点の座標がわかれば他の一点の座標も計算でき,二つの点の座標が有理数ならば,他の一点の座標も有理数であるなどの性質をもっています.
a^p+b^p=c^pを満たすような楕円曲線:
y^2=x(x+a^p)(x−b^p)
が保型関数によってパラメトライズできないことの証明がフェルマーの最終定理の証明に繋がるのですが,これ以上はかなりこみいった話になるので追求しないでおきましょう.(楕円曲線の有理点の有無ではなく,楕円曲線そのものが存在しないことを示すのである.)
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