■算術平均・幾何平均不等式(その2)
【2】n=3,・・・,2^m−1,・・・の場合
a^4+b^4+c^4+d^4≧4abcd
の右辺において,d=(abc)^(1/3)とおくと
a^4+b^4+c^4+(abc)^(4/3)≧4(abc)^(4/3)
a^4+b^4+c^4≧3(abc)^(4/3)
あるいは,左辺においてd^4=(a^4+b^4+c^4)/3とおくと
(a^4+b^4+c^4)×4/3≧4abc{(a^4+b^4+c^4)/3}^(1/4)
a^4+b^4+c^4≧3(abc)^(4/3)
a→a^(3/4),b→b^(3/4),c→c^(3/4)と置き換えて
a^3+b^3+c^3≧3abc
同様に,n=2^m→2^m−1→2^m−2→・・・であるから,【1】【2】を併せれば,すべてのnについて算術平均・幾何平均不等式
算術平均≧幾何平均
が証明されたことになる.
また,調和平均は逆数の算術平均の逆数であるから,算術平均・幾何平均不等式においてa→1/a,b→1/b,c→1/c,・・・と置き換えれば
幾何平均≧調和平均
の不等式を間接的に導くことができる.すなわち
算術平均≧幾何平均≧調和平均
が成立する.
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【3】算術平均の幾何平均と幾何平均の算術平均
ここで,簡単な演習問題を解いてみよう.算術平均・幾何平均不等式の巡回置換
a^2+b^2≧2ab,b^2+c^2≧2bc,c^2+a^2≧2ca
を加えると
a^2+b^2+c^2≧ab+bc+ca
さらに,算術平均・幾何平均不等式(n=3)を使って
ab+bc+ca≧3(a^2b^2c^2)^(1/3)
(ab+bc+ca)^3≧27a^2b^2c^2
一方,これらをかけ合わせると,
(a^2+b^2)(b^2+c^2)(c^2+a^2)≧8a^2b^2c^2
この2式から
(a^2+b^2)(b^2+c^2)(c^2+a^2)/8
(ab+bc+ca)^3/27
の大小比較が問題となってくるが,a→√a,b→√b,c→√cと置き換えると
{(a+b)/2・(b+c)/2・(c+a)/2}^(1/3)
(√ab+√bc+√ca)/3
であるから,前者は「算術平均の幾何平均」,後者は「幾何平均の算術平均」の形になっている.
おそらくこの大小比較を直観的に求められるほど幾何学的な直感にたけた人はいないであろうから,以下,解析的な証明を試みたい.
(証明)
「算術平均の幾何平均」−「幾何平均の算術平均」をxの関数とみて,F(x)とおくと
F(x)=(x^2+b^2)(b^2+c^2)(c^2+x^2)/8−(xb+bc+cx)^3/27
F(0)=b^2c^2(b^2+c^2)/8−b^3c^3/27
=b^2c^2/8・{(b^2+c^2)−8bc/27}
=b^2c^2/8・{(b−c)^2+46bc/27}≧0
また,微分すると
F’(x)=(b^2+c^2)/4・(2x^3+(b^2+c^2)x)−(b+c)/9・((b+c)x+bc)^2
この結果,F’(x)≧0が得られればF’(x)≧0,また,F(0)≧0より「算術平均の幾何平均は,幾何平均の算術平均よりも大きい」ことが証明されたことになるのだが,残念ながら
F’(0)=−(b+c)(bc)^2/9≦0
となってしまい,証明は失敗である.
ここでは解析的な証明を考えたが,解析的な方法は人の心にストレートに訴えるものがあり着実であるが,面白味に欠ける方法であり往々にして失敗するというわけである.
算術平均の幾何平均≧幾何平均の算術平均
の証明にはもっとうまい手があって,ヘルダーの不等式を使って別証明を与えることができるそうだ.
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