■算術平均・幾何平均不等式(その1)
(a1+a2+・・・+an)/n≧(a1a2・・・an)^(1/n)
また,もっと一般的には,δ1,・・・,δnを
δ1+・・・+δn=1
を満たす重みとすると
δ1a1+δ2a2+・・・+δnan≧a1^δ1a2^δ2・・・an^δn
が有名な算術平均・幾何平均不等式である.
算術平均・幾何平均不等式のもっとも単純な場合が
(a+b)/2≧√ab
である.これより
a^2+b^2−2ab=(a−b)^2≧0
を示す方が簡単であろう.改めてa→√a,b→√bと置き換えて
(a+b)/2≧√ab
a^3+b^3+c^3−3abc≧0
を示すためには,受験参考書に必ず書いてある
a^3+b^3+c^3−3abc
=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)
=(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}/2≧0
という公式を思い出してもらいたい.
a^2+b^2−2ab
a^3+b^3+c^3−3abc
a^4+b^4+c^4+d^4−4abcd
さらに高次元化した
a^5+b^5+c^5+d^5+e^5−5abcde
a^6+b^6+c^6+d^6+e^6+f^6−6abcdef
などが,本質的に算術平均と幾何平均の差となっていることは,このコラムの読者であれば既におわかりであろう.
上に凸な関数では,不等式
φ((a1+a2+・・・+an)/n)≧(φ(a1)+φ(a2)+・・・+φ(an))/n
が成立する.このことからφ(x)=logxとおくと,算術平均・幾何平均の不等式は容易に証明される.
また,不等式
f(x)=exp(x)-x-1≧0
g(x)=x^n-nx+(n-1)=x^n-1-n(x-1)≧0
あるいはx→x+1と置き換えて
h(x)=(x+1)^n-1-nx≧0 (ベルヌーイの不等式)
などを使っても算術平均・幾何平均の不等式を示すことができる.
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【1】n=2,4,8,・・・,2^m,・・・の場合
a^4+b^4≧2a^2b^2
c^4+d^4≧2c^2d^2
を辺々を加えると,
a^4+b^4+c^4+d^4≧2(a^2b^2+c^2d^2)
右辺に対して,算術平均・幾何平均不等式を用いると,
a^4+b^4+c^4+d^4≧4abcd
が得られる.
a^8+b^8+c^8+d^8+e^8+f^8+g^8+h^8−8abcdefgh
に対しても,4個ずつの組に分けて考えると
a^8+b^8+c^8+d^8≧4a^2b^2c^2d^2
e^8+f^8+g^8+h^8≧4e^2f^2g^2h^2
a^8+b^8+c^8+d^8+e^8+f^8+g^8+h^8
≧4a^2b^2c^2d^2+4e^2f^2g^2h^2≧8abcdefgh
が示される.
この方法を繰り返して使うと,
n=2^m→2^(m+1)→2^(m+2)→・・・
の場合を示すことができる.
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