■ありやなしや(その73)
[補]素因数分解の一意性
正の整数では素因数分解の一意性が成り立ちますが,扱う数の範囲を広げると,既約因子の積に2通りに表されるような状況を生じます.たとえば,扱う数の範囲を整数から,
Z(√−5)={a+b√−5|a,bは整数}
にまで拡げると,
6=2・3=(1+√−5)(1−√−5)
2,3は素数ですし,
1+√−5,1−√−5
はいずれも
a+b√−5
のなかには±1と±それ自身以外の約数をもたないので「素数」です.
なお,この状況に対して,これはまだ分解が足りないためだと考えることもできます.すなわち,2,3,1±√−5は素数でなく,さらに究極の数α,β,γ,δがあって,
2=αβ,3=γδ,1+√−5=αγ,1−√−5=βδ
となっていて,
6=αβγδ
が6の素因数分解となるという考え方をクンマーの理想数の理論といいます.もちろん,α,β,γ,δはZ(√−5)の中には存在しません.素因数分解したときの素因数がすべて含まれている集合を考えるのです.
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