■ヒンチンの定理のための発見的議論

数を連分数で表示すると数字1が大量に出現することに気づきます.そこで,連分数の部分商の分布について考えてみます.

  [参]Havil著,新妻弘監訳「オイラーの定数ガンマ」共立出版

によると,整数部を除いた[0:a1,a2,a3,・・・,an]がxより小さい小数となる確率は

 P([0:a1,a2,a3,・・・,an]<x)=log2(1+x)+εn

で与えられますが,1928年にクズミンはほとんどすべての連分数に対して,

  εn=O(q^√n)  0<q<1

1929年にレヴィは

  εn=O(q^n)  q=0.7

であることを示しました.どちらも誤差項εnは漸近的に0になることを示しています.

 連分数の部分商の確率密度関数は

  P(an=k)=P(k<εn<k+1)=P(εn<k+1)−P(εn<k)

→log2(1+1/k)−log2(1+1/(k+1))=log2(1+1/k(k+2))

 したがって,十分大きなnに対する部分商の起こる確率Pは

k        1  2  3  4  5  6  7  8 9+

P(an =k)  .41 .17  .09  .06  .04 .03 .02 .02 .16

となることがわかります.

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【5】ヒンチンの定理

 次にanの平均値を求めてみます. ヒンチンは一般の連分数

  [a0:a1,a2,a3,・・・,an,・・・]

の大多数についてあてはまる法則を発見しています.

 ヒンチンの定理とは,幾何平均(a1a2・・・an)^1/nの値がn→∞のとき,ある無限乗積から定まる定数

  (a1a2・・・an)^1/n→Π(1+1/k(k+2))^logk/log2=2.685452001・・・

に収束するというものです.κ=2.68545・・・はヒンチンの定数として知られています.

 ただし,分母に明確なパターンのある代数的数やeをはじめとするいくつかの超越数は例外になります.

  (eの場合,(a1a2・・・an)^1/n→0.6259・・・)

 算術平均は発散するのに対し幾何平均は収束するというわけですが,ほとんどすべての連分数の場合,調和平均も収束し,その極限値は

  n/(1/a1+1/a2+・・・+1/an)→1.74540568・・・

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