■類数1(その1)
整数係数の2元2次形式
f(x,y)=ax^2+bxy+cy^2
の判別式はd=b^2−4acで与えられる.
与えられた判別式dをもつ簡約2次形式は有限個しかない.−d=4ac−b^2≧3acであるから,a,c,|b|は|d|/3を越えることはないからである.
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【3】簡約2次形式と類数
それでは,与えられた判別式dをもつ簡約2次形式は何個あるのだろうか?判別式dの簡約2次形式の個数を類数と呼び,h(d)と書く.たとえばd=−4のとき,3ac≦4よりa=c=1,b=0.したがってh(−4)=1
−d=4ac−b^2≧3ac→−a<b≦a<cまたは0≦b≦a=cより,(a,c)を定め,それらに対しb^2=4ac+dより,bが定められるかどうかを見てみよう.
[1]d=−3
3ac≦3→(a,c)=(1,1),b=±1.しかし,変換
[x]=[1,−1][x’]
[y] [0, 1][y’]
により(a,b,c)=(1,1,1)と(1,−1,1)は同値.ゆえにh(−3)=1
[2]d=−4,h(−3)=1
[3]d=−7
3ac≦7→(a,c)=(1,2),b=±1.(a,b,c)=(1,1,2)と(1,−1,2)は同値.ゆえにh(−7)=1
[4]d=−8
3ac≦8→(a,c)=(1,2),b=0.h(−8)=1
[5]d=−11
3ac≦11→(a,c)=(1,3),b=±1.(a,b,c)=(1,1,3)と(1,−1,3)は同値.ゆえにh(−11)=1
[6]d=−19
3ac≦19→(a,c)=(1,5),b=±1.(a,b,c)=(1,1,5)と(1,−1,5)は同値.ゆえにh(−19)=1
[7]d=−43
3ac≦43→(a,c)=(1,11),b=±1.
(a,c)=(1,13),b=±3.
しかし,変換
[x]=[1,−1][x’]
[y] [0, 1][y’]
により(1,1,11)→(1,−1,11),(1,3,13)→(1,1,11),(1,−1,11)→(1,−3,13).ゆえにh(−43)=1
[8]d=−67
3ac≦67→(a,c)=(1,17),b=±1.
(a,c)=(1,19),b=±3.
しかし,変換により(1,1,17)→(1,−1,17),(1,3,19)→(1,1,17),(1,−1,13)→(1,−3,19).ゆえにh(−67)=1
[9]d=−163
3ac≦163→(a,c)=(1,41),b=±1.
(a,c)=(1,43),b=±3.
(a,c)=(1,47),b=±5.
(a,c)=(1,53),b=±7.
しかし,変換により(1,1,41)→(1,−1,41),(1,3,43)→(1,1,41),(1,−3,43)→(1,−5,47),(1,5,47)→(1,3,43),(1,7,53)→(1,5,47),(1,−5,47)→(1,−7,53),(1,−1,41)→(1,−1,43).ゆえにh(−163)=1.
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類数h(d)とは判別式dをもつ2次形式の非同値な類の個数にほかならないのであるが,ところで,一意分解性をもつ虚2次体Q(√d)はすべて知られていて
d=−1,−2,−3,−7,−11,−19,−43,−67,−163
であることが1966年,ベイカーとスタークにより独立に証明された.(両者の方法はまったく異なり,一方は超越数の理論,他方は楕円モデュラー関数の研究に依拠するものである.)
Q(√−5)において
6=2・3=(1+√−5)(1−√−5)
Q(√−6)において
6=2・3=(√−6)(−√−6)
はQ(√−5)やQ(√−6)が一意分解性をもたないことを示すものである.
たとえば,2=(a+b√−6)(c+d√−6)とおいて,ノルムをとれば4=(a^2+6b^2)(c^2+6d^2).これより(a,b,c,d)=(±1,0,±2,0),(±2,0,±1,0).ゆえに2は既約.同様に3,√−6も既約である.
それに対して,Q(√3)において
22=2・11=(5+√3)(5−√3)
はQ(√3)が一意分解性をもつことと矛盾しない.2,11,5+√3,5−√3は既約ではないからである.
2=(−1+√3)(1+√3)
11=(−1+2√3)(1+2√3)
5−√3=(−1+√3)(1+2√3)
5+√3=(−1+2√3)(1+√3)
一意分解性をもつ実2次体Q(√d)のすべてを見いだす問題は未解決であるが,無限に多く存在するだろうと予想されている(それすら証明されていない).
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