■整数の表現(その27)

【2】2元1次形式による表現とシルヴェスターの定理

 互いに素な2つの整数a1,a2が与えられたとき,非負整数が存在して

  m1a1+m2a2=n

が成り立つことは,硬貨の言葉に置き換えるとa1円玉とa2円玉を用いてn円が支払えることを意味する.どの額が支払えるか,支払えない最高額はいくらかという問題が考えられるところである(この問題はフロベニウスの硬貨交換問題と呼ばれる).

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 支払えない最高額をフロベニウス数と呼び,g(a1,a2)で表される.

  g(a1,a2)=a1a2−a1−a2=(a1−1)(a2−1)−1

で与えられ,1と(a1−1)(a2−1)の間にある整数のちょうど半数が表現可能である.

 たとえば,a1=4,a2=7の場合,g(a1,a2)=17で,表現不可能な整数の数は(a1−1)(a2−1)/2=9となる.

 シルヴェスターの定理の証明は母関数

  f(z)=1/(1−z^a1)(1−z^a2)z^n

の定数項と関連しているが,硬貨が3枚以上になると格段複雑になり,n元1次形式に対する公式はほとんど成功しなかった.

 なお,n×n正方行列で各行各列の和が同じになるものを半魔方陣Hn,主対角線の和も同じになるものを魔方陣Mnと呼ぶと,それぞれの魔方陣の数も母関数の定数項と関連している.魔方陣の数を数え上げる問題の研究は20世紀になってからようやく始まったものである.

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