■数学よもやま話(その2)

ピタゴラス数

 直角三角形では斜辺をc,他の二辺をa,bとすると,ピタゴラスの定理「a^2+b^2=c^2」が成り立つことはよく知られています.特に,三辺の長さが整数である直角三角形をピタゴラス三角形といいます.3元2次の不定方程式a^2+b^2=c^2の整数解を求める問題をピタゴラスの問題といいますが,(a,b,c)=(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17),・・・などがその解です.

 ピタゴラス三角形は無限にあり,その一般形にはいくつかの変形がありますが,m,nを整数,kを相似係数として

  a=k(m^2−n^2),b=2kmn,c=k(m^2+n^2)

が形も簡単で広く用いられています.二つの文字を使った公式

  (m^2−n^2)^2+(2mn)^2=(m^2+n^2)^2

では全部を表すことができます.逆に,この式から4より大きい平方数は常に2つの自然数の平方の差として表されることがわかります.

 4000年も前の紀元前二千年頃に,エジプトでは(a,b,c)=(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17)などのピタゴラス三角形が知られていたことがパピルスに記録されています.また,同じ頃のバビロニアの粘土板プリンプトン322にはピタゴラスの定理が成り立つような3数の組が15組刻まれているのですが,その中のきわめつけが(12709,13500,18541)です.この数値は試行錯誤で得られるような代物ではなく,バビロニア人たちはすでに一般的なピタゴラスの定理を知っていたのではないかと想像されます.

 すべてのピタゴラス三角形は整数の面積をもっています.三辺の長さと面積が整数である三角形をヘロン三角形といいますが,直角三角形でない三角形の中にもヘロン三角形は存在します.ヘロン三角形は2つのピタゴラス三角形を貼り合わせることで簡単に作ることができ,たとえば,直角三角形(5,12,13)と直角三角形(9,12,15)から三辺の長さが(13,14,15)で面積が84の鋭角三角形と三辺の長さが(4,13,15)で面積が24の鈍角三角形が得られます.一般に,3辺と面積が有理数であるようなすべての三角形は,有理数辺をもつ2つの直角三角形から合成されます.3辺がすべて有理数の直角三角形は適当な整数倍によってピタゴラス三角形になりますから,ヘロン三角形は広義のピラゴラス三角形から合成されるといってもよいでしょう.なお,直角三角形の面積は6の倍数ですが,それが平方数となる(a,b,c)は存在しません.

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(Q)ピタゴラスの問題x^2+y^2=z^2において,(3,4,5)がこの方程式を満たすことはよく知られている.x,yの一方は偶数であるとして,x,y,zの少なくともひとつは3の倍数であり,少なくともひとつは4の倍数であり,少なくともひとつは5の倍数であることを証明せよ.

(A)x,y,zのいずれも3の倍数でないとすれば,それらは3k±1の形であるから

  (3k±1)^2=1  (mod3)

であるから,x^2+y^2=z^2  (mod3)の左辺は2,右辺は1となって不合理.

 x,y,zのいずれも4の倍数でないとすれば,それらは4k±1,4k±2の形である.

  (4k±1)^2=1  (mod8)

  (4k±2)^2=4  (mod8)

であるから,yを4k±2の形とするとx^2+y^2=z^2  (mod8)の左辺は5または0,右辺は1または4となって不合理.

 x,y,zのいずれも5の倍数でないとすれば,それらは5k±1,5k±2の形である.

  (5k±1)^2=1  (mod5)

  (5k±2)^2=4  (mod5)

であるから,x^2+y^2=z^2  (mod5)の左辺は2,0,3,右辺は1または4となって不合理.

 したがって,ピタゴラスの三角形においてxyは偶数であるから,面積は整数であり,xyzは60の倍数であることも証明された.

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