■ロスの定理とabc予想(その1)

【1】ロスの定理(1955年)

代数的無理数はすべて2次で有理数近似可能であり、それ以上ではない。

数xがn次で有理数近似可能とは

  |x-p/q|を満たす有理数p/qが無限にあるようなk(x)が存在するときをいう。

 abc予想はロスの定理の強力版と考えることができる.

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 a,b,cはいずれも2^x3^y5^zの形の自然数とする.このとき,

  a^p+b^q=c^r

をみたすような(a,b,c)は有限個しかない.

[1]間隔2

  3+2=5

  5^2+2=3^3

[2]間隔3

  5+3=2^3

  5^3+3=2^7

 このような考え方がabc予想に繋がっていく.

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【2】abc予想

  a=p1^e1p2^e2・・・pr^erのとき,相異なる素因数すべての積を

   rada=p1p2・・・pr

と定義する.たとえば,

  rad(19800)=rad(2^33^25^211)=2・3・5・11

 しかし,ABC定理の類似:どの2つも互いに素ばa,b,cが,a+b=cを満たすとき

  max(|a|,|b|,|c|)<rad(abc)

は成り立たない.たとえば,反例(カタラン)

 (a,b,c)=(1,8,9)

  max(|a|,|b|,|c|)=9

  rad(abc)=6

 そこで,条件を緩めた

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^N

なる整数(>1)が存在する

には反例も証明も知られていない.もし,abc予想が成り立つならば,n>3Nに対するフェルマーの定理

  x^n+y^n=z^n

も成り立つ.

 また,abc予想といって複数種類ある.たとえば,これを精密化した

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^κ

は有限集合であるという,エステルレ・マッサー予想では,κ=1は無限集合であり,κ=1.5は13,κ=1.6は3つ,κ=2はひとつも知られていない.

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