■鉤股弦の定理(その5)

アメリカの数学会で、二人の若い女性が、ピタゴラスの定理の新しい証明を示して、話題になったという記事がありました。

以下で検索すれば、すぐ出てくると思います。「10代の少女がピタゴラスの定理の新しい証明を示す 最も美しい証明と評価」

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 十年ほど前に中国・大連で数学の講演を行った際,同行した通訳の高橋公一郎氏(秋田県横手市在住)がピタゴラスの定理を「鉤股弦の定理」と訳していた.中国では日本ではカタカナにするような単語,たとえばコカコーラを口可口楽にするなど「音」をあてはめることによって表現する.

 人名,たとえばガウス(高斯)もその類であるが,ピタゴラス=鉤股弦なのであろうか?

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 私の理解するところでは,直角三角形a^2+b^2=c^2(a≦b≦c)において,直角を挟む2辺のうち短いほう(a)が鉤,長いほう(b)が股,斜辺(c)が弦である.なお,英語ではaもbもlegである.

 劉徽の「九章算術」では,「鉤股弦の定理」の証明を鉤と股の2つの正方形を,古代中国のタングラムのように単純な三角形や四角形に分割して,斜辺の正方形に再配置している.その再配置の方法はユークリッドの原論のものより理解しやすいものになっている.

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  x^2+y^2=z^2

に対して

  x^3+y^3=z^3

  x^4+y^4=z^4

には,等式を満たすような整数の組み合わせがないことをオイラーが証明.しかし,さすがのオイラーも5より大きいベキについては匙を投げた.

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[1]x^5+y^5=z^5  (ディリクレ,1829年)

[2]x^7+y^7=z^7  (ラメ,1839年)

[3]x^n+y^n=z^n,n<100  (クンマー,1857年)

には,等式を満たすような整数の組み合わせがないことが証明さえる.

[4]1980年代に入って,フライが,もし,a^n+b^n=c^nを満たす解があるとすると,楕円曲線

  y^2=x(x−a^n)(x+b^n)

が得られる.しかし,これは極めて異様なことと考えられた.

[5]リベットはフライの状況証拠説を証明,すなわち,谷山・志村予想が正しければフェルマー予想も正しい.

[6]ワイルズが谷山・志村予想を証明,したがって,フェルマー予想も正しい.

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