■ありやなしや(その20)
【2】類数1
ここで紹介するのは,重根をもつ・もたないの判別ではなく,素数の分解法則と密接に関係している判別式です.
2次形式ax^2+bxy+cy^2の判別式
D=b^2−4ac
の値が等しくなる同値でない2次形式の個数を「類数」と呼ぶ.類数とはすべての数体に付随した不変量(自然数)なのですが,類数1をもつというのは,2次体Kのすべての代数的整数が,Kの素数の積として表され,その表現が単数(1の約数となる整数)を無視して,一意であることをいいます(素因数分解の一意性).
類数の研究はラグランジュとガウスに始まる.とくに興味が持たれるのは類数の値が1となるDがどれくらいあるかであった.その研究は徐々に進展し,1950年代になってヘーグナー,1967年にはスターク,ベイカーによって,類数1をもつDは9つしかないことが示された.
D=−3,−4,−7,−8,−11,−19,−43,−67,−163
2次体Q(√d)の判別式Dは
d=2,3(mod4) → D=4d
d=1(mod4) → D=d
となるのですが,d=・・・に直すと
d=1,2,3,7,11,19,43,67,163
後半の4つのdに対して,Q(√−d)の整数環はユークリッド整域ではない.(整除すなわち余りを出す除法のアルゴリズムが定義できる整域をユークリッド整域という.)
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