■2次曲線の中の円(その3)
直観幾何学研究会2023において、松田康雄先生(長崎大学)が2次曲線をめぐる話題を取り上げられた
カージオイドの尖点における反転は放物線である。
カージオイド:r=1+cosθ
放物線:r'=1/(1+cosθ)
r・r'=1
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【1】垂足曲線の特異点
曲線の各点における接線に対して,定点から下ろした垂線の足の軌跡を垂足曲線といいます.
パスカルのリマソン(蝸牛線)は定点Oから定円への接線へ下ろした垂線の足の軌跡は極座標では
r=a+bcosθ
と表されます.ここでいうパスカルはブレーズ・パシカルの父,エチエンヌ・パスカルを指します.
蝸牛線のx,yに関する方程式は
(x^2+y^2−ax)^2=b^2(x^2+y^2)
となる4次曲線ですが,a=bの場合はエピサイクロイド(固定した円の円周上を外側から円が滑らずに転がるとき,転円上の固定点の軌跡)の1つである心臓型曲線(カーディオイド)と一致します.
r=a+acosθ
すなわち,円:x^2+y^2=a^2の接線へ円周上の点(a,0)から下ろした垂線の足の軌跡はカージオイドとなり,円周上にない点を定点とした場合は,蝸牛線になるのです.
また,直角双曲線の中心に関する垂足曲線はベルヌーイのレムニスケート(連珠形)になります.レムニスケートは,直角双曲線上に中心をもち,双曲線の中心を通る円の包絡線と考えることもできますが,ここで<問題>です.
<問題>2定点(−a,0),(a,0)からの距離の和が一定となる点の軌跡は楕円,差が一定の点の軌跡は双曲線です.また,商が一定の点は円(アポロニウスの円)を描きます.それでは積が一定の点はどのよう軌跡を描くでしょうか?
(答)カッシーニ曲線
{(x+a)^2+y^2}{(x−a)^2+y^2}=c^2 .
(x^2+y^2)^2−2a^2(x^2−y^2)=c^4−a^4
r^4 −2a^2r^2cos2θ+a^4=c^4
楕円,放物線,双曲線が円錐を平面で切断したときの切り口として現れたように,カッシーニ曲線はトーラス(ドーナツ)の平面による切断面として現れることが知られています.
特に,定数が2定点間の距離の半分の2乗に等しいとき(c^2=a^2),レムニスケート(連珠形,双葉曲線).レムニスケートは8の字形(8を90°回転した形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2+y^2)^2=2a^2(x^2−y^2),極座標系ではr^2=a^2cos2θ. 2定点を(−1/√2,0),(1/√2,0)とし,定数を1/2と定めると,レムニスケートの方程式は極座標で書くとr^2=cos2θ,直交座標で書くと(x^2+y^2)^2=x^2−y^2となります.
レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数であることです.また,アーベルはこの関数が複素変数の有理型関数に拡張できることを明らかにし2重周期関数となることを示しました.レムニスケートの研究は楕円関数の研究につながるものであったのです.
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垂足曲線の特異点はそれぞれの曲線の変曲点(曲率=0)に対応していることが示されています.そのほかに,垂足曲線には,円族の包絡線であるという共通の性質が知られています.
レムニスケートが直角双曲線上に中心をもち,双曲線の中心を通る円の包絡線になっていることはすでに述べましたが,カージオイドは円周上に定点Pをとり,円周上の任意の点Qを中心に半径PQの円を次々にとって描いていくと,それらの円の包絡線として得られます.したがって,カージオイドには,円の包絡線として,周転円の円周上の点の軌跡として,垂足曲線としての3つの作り方があることになります.また,定点を円周上にない点にとったとき,円群の包絡線がリマソンです.
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