■直観幾何学研究会2023(その17)
フースは双心五角形,六角形,七角形,八角形に関する同様の公式も見つけたとされるが,彼は本当に基底を見つけたのだろうか? 大いに疑問感ずる.彼が計算方法を与える方程式を示しただけではなかろうかと思われるのである.フースの論文(Nova Acta Petropol XIII, 1798)を入手するのは難しそうである.そこで,以下では,双心五角形,六角形,七角形,八角形,(九角形,十角形,・・・)の場合を検証してみることにしたい.
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【2】リンク機構とグレブナー基底
複数の棒を互いに結合してできる連接棒を「リンク装置」と呼びます.連接棒の一点を直線や曲線に沿って動かすとき,複雑な変化のある曲線を描くことができます.たとえば,ジェームズ・ワットのリンケージは蒸気エンジンのピストンロッドなどに実用化されています.また,ポースリエの反転器は円運動を直線運動に,直線運動を円運動に変換する機構で,リンク装置の用途は多方面にわたっています.
ところで,連結クランク上の点の軌跡は,一般的な形の多項式
f(x)=c+Σricos(δi)
g(y)=c+Σrisin(δi)
に書き換えることができますが,これを数式処理ソフトのグレブナー基底計算プログラムを用いて,代数曲線φ(x,y)=0として表すことができます.
ここでは,平面上で回転できる関節を考えましたが,さらに,回転と同時に伸縮も可能な関節を考えます.すると,オイラー・フースの定理の拡張版は,連立方程式
xicosθi+yisinθi=ci (ヘッセの標準形)
xi^2+(yi−ci)^2=γi^2
のグレブナー基底を計算することによって得られることがわかります.
[1]n=5の場合
内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(0,R+d)とすると,
x1cosθ−rsinθ=r
x2cosθ+y2sinθ=r
x2cosφ+y2sinφ=r
(R+d)sinφ=r
また,外接円の中心O(0,d)と点A,点Bとの距離の2乗はR^2となることより
x1^2+(r+d)^2=R^2
x2^2+(y2−d)^2=R^2
[2]n=6の場合
内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(x3,r)とすると,
x1cosθ−rsinθ=r
x2cosθ+y2sinθ=r
x2cosφ+y2sinφ=r
x3cosφ+rsinφ=r
また,外接円の中心O(0,−d)と点A,点B,点Cとの距離の2乗はR^2となることより
x1^2+(r−d)^2=R^2
x2^2+(y2+d)^2=R^2
x3^2+(r+d)^2=R^2
θとφを消去するにはどうしたらよいか? 実はこれらに対しては,単純にグレブナー基底を計算せよというコマンドを入力することによって,次の結果が得られた.
[1]双心五角形
d^6−2d^4rR+8d^2r^3R−3d^4R^2−4d^2r^2R^2+4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4−2rR^5−R^6=0
[2]双心六角形
3d^8−4d^6r^2−12d^6R^2+4d^4r^2R^2−16d^2r^4R^2+18d^4R^4+4d^2r^2R^4−12d^2R^6−4r^2R^6+3R^8=0
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