■直観幾何学研究会2023(その16)
ポンスレーの定理とは「小円を大円の内部におく.大円上の点P0から小円へ接線を引き,大円と交わる点をP1とする.P1から再び小円へ接線を引き,大円と交わる点をP2とする.この2つの円の中間に次々に接する接線列を作る.たいていの場合,最後の交点は最初の点P0と重ならない.しかしときとして完全に重なる場合がある.このとき,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなす.」というものです.
ポンスレーの定理は,2つの円を2つの楕円ばかりか,どんな円錐曲線に置き換えても成立します.さらに円を球面上の球帽,n角形を球面上の円弧n角形に置き換えても成立します.
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【1】ポンスレーの定理とオイラー・フースの定理
ポンスレーの定理において,一方の円(半径R)に内接し,もう一方の円(半径r)に外接する三角形は無数にある.これが成り立つための条件は2つの円の中心間距離をdとして,
R^2−2Rr=d^2
となることである(オイラーの定理).2つの円が同心円ならばd=0であるから,R=2rが成り立つ.
四角形やそれ以上のn角形についても同様の定理が成り立ち,ひとつの円に内接し,他の円に外接する四(n)角形は無数にある.オイラーの定理のn角形版として,フースの定理が知られている.たとえば,内接円と外接円の両方をもつ四角形(双心四角形)では,
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2 (フースの定理)
が成り立つ.2つの円が同心円ならばd=0であるから,R=√2rが成り立つ.また,双心四角形の2組の対辺上の内接円の接点を結ぶ線分は互いに直交する.
R^2−2Rr=d^2 (オイラーの定理)
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2 (フースの定理)
は初等幾何学的に大学入試程度の問題に還元できる.
[1]オイラーの定理の証明
内接円の中心を原点にとると,等辺となる直線は
xcosθ+ysinθ=r
外接円との交点をA(x1,−r),B(0,R+d)とすると,
x1cosθ=r(1+sinθ)
(R+d)sinθ=r
二等辺三角形の等辺の長さは正弦定理より
a/sin(π/2−θ)=a/cosθ=2R
また,二等辺三角形の半分の直角三角形に注目すると
(R+d+r)/a=cosθ
R+d+r=2R(cosθ)^2
さらに相似三角形より
r/(R+d)=sinθ
2Rr^2/(R+d)^2=2R(sinθ)^2
2つの方程式からθを消去すると,オイラーの定理
R^2−2Rr=d^2
が示される.
[2]フースの定理の証明
凧型の代わりに等脚台形を考えることにする.内接円の中心を原点にとると,脚となる直線は
xcosθ+ysinθ=r
外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,r)とすると,
x1cosθ=r(1+sinθ)
x2cosθ=r(1−sinθ)
これらは
x1x2=r^2
を満たす.
また,外接円の中心O(0,−d)と点A,点Bとの距離の2乗はR^2となることより
x1^2=R^2−(r−d)^2
x2^2=R^2−(r+d)^2
x1^2x2^2=r^4
に代入して整理すると
2r^2(R^2+d^2)=(R^2−d^2)^2
が得られる.
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