■ワイソフ座標と重心座標(その32)

三角形ABCの各辺を1:λの比に順次内分した点D,E,Fとし,AD,BE,CFの2本ずつの交点が作る三角計PQRを仮に「縮小三角形」と呼ぶことにする.

 正三角形の縮小三角形は正三角形であるが,中川宏さんの研究は任意の三角形の縮小三角形がもとの三角形と相似になる場合の問題である.かなり面白く,数セミ・ノート欄に投稿してもよいような内容である.

 一松信先生はこの問題を「重心座標」を使って計算されたそうであるから,小生も

  [参]一松信「現代に活かす初等幾何入門」岩波書店,p10

を参考にしながら計算を試みたのであるが,重心座標系での相似形をどう表現するのかわからない.そこで,一松信先生に解説をお願いすることにした.

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【1】縮小三角形がもとの三角形と相似になる場合

[Q]縮小三角形がもとの三角形と相似になることがあるか? あるとすればどのような場合か?

 中川宏さんはλ=2で,三角形は直角三角形の場合を扱っているが,ここでは少し一般化し,λを1より大きい定数,三角形を任意の三角形として論じることにする.一松先生の結論を先にいうと

[A]同じ向きに相似になるのは正三角形のときに限る.裏返しに相似になるのはパラメータa,b,c,λの間に特別な関係がある場合である.たとえば,λ=2のときは正三角形の半分(3辺の比が1:√3:2)のときがその一例である.

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【2】証明

 以下,その証明をするが,重心座標による証明が簡便なので,それを使う.

[1]主要な点の重心座標はD(0,λ,1),E(1,0,λ),F(λ,1,0)

直線AD,BE,CFの方程式はそれぞれy/λ=z,z/λ=x,x/λ=y.

AD

A(1,0,0),D(0,λ,1)

u=0

vλ+w=0

v=1とおくとw=-λ

y-λz=0

これらの交点としてP(λ,1,λ^2),Q(λ^2,λ,1),R(1,λ^2,λ)   (いずれも重心座標の比のみ)

BEとCFの交点はz=λx,x=λy

y=1とおくと、x=λ、z=λ^2→P(λ,1,λ^2)

 ΔPQRの面積/ΔABCの面積=[λ,1,λ^2]/(λ^2+λ+1)^3

                 [λ^2,λ,1]

                 [1,λ^2,λ]

=(λ−1)^2/(λ^2+λ+1)

   λ=2なら1/7,λ=3なら4/13

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