■合同数の話(その19)
たとえば,m=5,n=−5とすると
F=mx^2y−nyx2−(x−y)z^2
=5x1^2x2+5x1x2^2+x1x0^2−x2x0^2=0
この上の点P=(x)=(x0,x1,x2)=(30,4,5)とすると,
2P=(62279,11532,28812)
次に
φ(x,y,z)=(y(z^2−mx^2)=x(z^2−ny^2),2xyz,y(z^2+mx^2),x(z^2−ny^2))
を用いて,整数点φ(P),φ(2P)を計算すると,
φ(P)=(41,12,49,31)
→41^2+5・12^2=49^2
41^2−5・12^2=31^2
φ(2P)=(3344161,1494696,4728001,−113279)
→3344161^2+5・1494696^2=4728001^2
3344161^2−5・1494696^2=(−113279)^2
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この節の最後に,オイラーによる楕円曲線:y^2=ax^3+bx^2+cx+dの解法を紹介しましょう.
d=f^2とする.gを未知数として,ax^3+bx^2+cx+f^2=(gx+f)^2なる関係を考える.c=2fgになるようにgを定めれば,ax+b=g^2.したがって,
x=(g^2−b)/a=(c^2−4bf^2)/4af^2
なる有理数解を得る.
手品のようですが,幾何学的に考えると
F(x,y)=y^2−ax^3−bx^2−cx−f^2
の点(0,f)における接線の方程式は−cx+2f(y−f)=0.ここで,c=2fgと定めるとy=gx+fになる.曲線は3次で,接点では2重に交わるから,第3の交点(有理点)が1つ決まるのです.
y^2=ax^4+bx^3+cx^2+dx+e
では,e=f^2,d=2gf,c=g^2+2hfとおくと,ax^4+bx^3+cx^2+dx+f^2=(hx^2+gx+f)^2より,ax+b=h^2+2hg.したがって,
x=(b−2hg)/(h^2−a)
なる解が得られます.
y^3=ax^3+bx^2+cx+d
の場合も同様に解くことができますが,これらの方法は実質的にはディオファントスまでさかのぼることができます.【1】フィボナッチの問題
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[補]正の整数Aが3辺が有理数の直角三角形の面積になっているとき,すなわち,A=ab/2,a^2+b^2=h^2のとき,合同数と呼ばれる.6は直角三角形(3,4,5)の面積,30は直角三角形(5,12,13)の面積であるから合同数である.最小の合同数は直角三角形(3/2,30,3,41/6)の面積5である.1は合同数ではない.
(平方因子をもたない)正の整数Aが合同数であるための必要十分条件は
x^2+Ay^2=z^2
x^2−Ay^2=w^2
が整数解でy≠0のものをもつことである.
合同数問題における整数Aの性質と楕円曲線:y^2=x^3−A^2xとの関連については
J.S.Chahal「数論入門講義」共立出版
を参照されたい.
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